もうひとつの案として、ANAへの吸収合併もあり得ない話ではない。ANAもスターフライヤーと同じ機体を使用しており、機材数が増えるだけで導入は容易だ。そして、ANAにとってはスターフライヤーの持つ19の羽田発着枠が手に入ることとなる。

しかし、この場合の他社の反発は大きなものがあるだろう。羽田の発着枠は各社に割り振られたものであり、統合したからと言って、そのまま加算したのでは競争原理をゆがめるという考えがあるからだ。これらの案は会社自体の消滅を意味するので最終兵器になろう。

格納庫に入ったエアバスA320型機
筆者撮影
格納庫に入ったエアバスA320型機

LCCになっても今は耐えるときだ

三つ目は筆者が考える最適解となる「プレミアムLCC」として生き残っていく手があると言いたい。

座席数こそエアライン収益の源であり、180席配置できる機材に現在のスターフライヤーの150席のまま2割近くも少ないのでは収益は上がらないだろう。

そこで、座席数は180以上に改修し、座席数以外のハード面に手を付けないで、ソフト面の人的サービスは維持する。運賃は思い切って安くし、付加サービスは買ってもらう。デザインコンセプトや、制服などそのままでいいではないか。11機を保有するスターフライヤーで各航空機が30席増えれば合計330席増える。およそ2機分多く航空機を持っているのと同じ座席数となる。これは、米国で誕生して成功したJet Blueの事例に近いものがある。

LCCをうたう同社だが、設立当初から機内にはTVモニターを設置し、他社が不便な都市圏第2空港から発着するのに対し、ベースとなるニューヨークではジョン・F・ケネディ空港を使用するなどファンを増やした。今では、サウスウェスト航空に次ぐ米国第2のLCCだ。

国内線の路線の中心となる飛行時間1時間半程度であれば、シートピッチが他社と同じでも影響は少ないと思われる。座席数の転換はそう難しいことではない。今の飛行機の座席はレールに固定されており、その位置を変え、酸素マスクの装備量を増やせばいい。

日本の土壌にプレミアム戦略を持ち込んだスターフライヤーの功績は計り知れない。プレミアムLCCとして経営を安定させ、一次的にターゲットをレジャー顧客にシフトしてでも、コロナ禍収束ののちに改めてさらなるプレミアム戦略に進めばいい。

提携先が見つからないスターフライヤーにとって残された道は多くはない。コストの流出を止めるためにも早期に新たな戦略を決断する時だ。

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