朝ドラマ史の変革の一つ「ゲゲゲの女房」

続く「おちょやん」の放送は2020年11月30日から2021年5月14日までで、全115話。期間平均視聴率は17.4%だった。続いては「おかえりモネ」で、2021年5月17日から10月29日まで全120話が放送された。期間平均視聴率は16.3%。

朝ドラの歴史で大きな変革の一つに、放送開始時間を15分繰り上げ午前8時としたことがある。2010年度上期の「ゲゲゲの女房」からで、これが視聴率に好影響を与えた。その前(2019年度)の2作が13%台と史上最低水準に落ち込んでいたのだが、18.6%まで回復したのだ。そこから視聴率はじわじわ上昇、2012年度上期の「梅ちゃん先生」が20%を突破(20.7%)、以後、「エール」まで2作品を除いて、20%台をキープしてきた。

再び自著の話で恐縮だが、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』の3章のタイトルを「せっかくなのに、なぜ」とした。「テレビ離れ」と言われる中、20%台を取れるのは朝ドラだけ。それなのに、時にどうにも評価できない作品が出てくる。そんな2作を取り上げ、こう書いた。「高視聴率が約束された朝ドラ枠なのだから、余計がんばらないとダメなのに。せっかくの舞台なのに、なぜなのだろう」。ちなみにこの2作でさえ(という言い方もなんだが)、1作は20%台、もう1作も19%台だった。

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いつ最終回を迎えるかわからないという欠点

それなのに、それなのに。すごく出来の良い「カムカムエヴリバディ」の最高視聴率が16.5%なのだ。「エール」(20.1%)→「おちょやん」(17.4%)→「おかえりモネ」(16.3%)という期間平均右肩下がりの波に乗ってしまっている。

「働く女子」にとって朝ドラが心を通わせやすかったのは、組織が年度で動き、4月と10月が節目になるからだと思う。自分や部下への評価をさせられる(と書いてしまうのだが)のもその時期だし、人事異動もそこに集中するところが多い。会社員人生、楽しいことばかりではなかったが、朝ドラが新しく始まることで「心機一転、自分も頑張りますか」と思えた。というのは私の話だが、そんな感覚、組織に属する女性なら、比較的理解してもらえると思う。

それなのに、それなのに。と同じ表現を使ってしまうが、最近の朝ドラは「いつの間にか始まって、いつの間にか終わる」ドラマになってしまっている。半端な時期に始まり、しかもその時点では最終回がいつになるのか不明。その状態が恒例化していて、「カムカムエヴリバディ」のホームページにも「全体の放送回数については、現段階において未定です」とある。

これはどうにも収まりが悪い。民放ドラマは、各局3カ月=1クールでほぼ動いている。放送サイクル=ドラマを選ぶリズム。それなのに、「朝ドラ」は、リズムを刻んでいない。だから選ばれる度合いが徐々に減り、熱心に見るのは私のようなコアな朝ドラファンだけ。そういう事態が進んでいるのではないだろうか。