良い話の回の視聴率はやっぱり良い

次が13話。冒頭、ラジオがミッドウェー海戦の“勝利”を告げている。安子の兄が出征、和菓子職人も次々と出征する。人手もなく、材料も手に入らなくなった作業場に、父が一人で座っている。そこに安子。のれんから顔を出し、「お父さん、私にできることねえ?」と聞く。父は、こんなことなら稔との交際を認めていればよかったと返す。

お父さん、違うよ、と心でつぶやく。安子は「和菓子の仕事をするよ」と言ってるんだよ、と。でも、父はそう思わない。仕事は男がするものだから。安子も作業場には入らず、遠回しにしか言わない。それが1942年の女子。でも、わかった。これはきっと、安子が和菓子作りにかかわることの伏線。いずれ結婚する夫は、戦場から帰らないかもしれない。でも、安子は自分の足で歩いていく。これが朝ドラ、希望が灯った。

というわけで、「カムカムエヴリバディ」は素晴らしいと力説した上で、ここからが視聴率の話だ。印象的だった8話と13話、視聴率を調べたら16.5%で、これは23話までの数字では最高だ。つまり、良い話の回は良い数字。実にシンプルな結果だ。わかってる人はわかってる、と言ってもいいだろう。やはり、視聴率の低迷は内容以外に原因がある。この数字からもそう思う。で、ここからは私の推論だ。

コロナの影響で大きくずれた放送スケジュール

問題は、放送時期の「ずれ」だと思う。1961年4月に放送が始まった朝ドラは、最初からずっと「年度」で動いてきた。1974年までは1年1作、1975年から年2作。以後ずっと「4月1日(前後)に始まり、9月30日(前後)で終わる」と「10月1日(前後)に始まり、3月31日(前後)で終わる」というリズムを基本としてきた。それが、2020年度の「エール」から大きくずれたのだ。

原因は新型コロナウイルスだ。3月30日に始まった「エール」は全130話を予定していた。NHKの働き方改革の一環として、1週の放送が6話から5話になったので、単純計算なら9月25日で終了、次の「おちょやん」が9月29日スタートとなるはずだった。

ところがコロナ禍で撮影が中断、6月26日(65話)を最後に放送も休みとなった。再放送でつなぎ、放送が再開されたのが9月14日。その時は「今後の放送スケジュールは未定」とされていたが、11月27日に終わった。予定より10話少ない全120話、期間平均視聴率は20.1%だった。