自分だけのスタイルを確立すれば何でもできる
間もなくリンダと俺は休む間もなく縫いものに励み、山のような服を売りさばき、朝から晩まで働くようになった。あちこちのリサイクルショップで素材を買い付け、パッチを縫いつけて、店に出す。品物は大人気だった。
俺はヤードセールや救世軍に足を運んでは、リーバイスを50セント、1ドルあるいは1ドル50セント、たまには2ドルくらいで仕入れた。買い付けに出かけるのは週末、月曜あるいは火曜で、出費が20〜30ドルを超えることはめったになく、そのあとはリンダのベニスのアパートに戻って、せっせと裁断し、ジーンズにパッチを縫いつけ、一本25ドルで売った。作業は全部2人でやった。
リンダがミシンを持っていたおかげで、1時間もあればひと山仕上げられたと思う。全部で5ドル、プラス俺たちの時間以上の持ち出しはなかった。
何もかもが急ピッチで進んだので、もちろん失敗もいろいろとあった。2人で思いつきを片っ端から試し、価格帯をしょっちゅう変えていた。「あのジーンズは25ドルでも売れたんじゃないか。もっとたくさんパッチを縫いつけて、売れ行きを見てみよう」という具合だ。もっと安くリーバイスを売っている店を見つけたり、ひと山いくらで割引してもらうこともあったし、違うスタイルも試してみた。うまくいくことも、さっぱりだめなこともあった。
ときには在庫がすっかり底をつく日もあった。お袋にはこんな手紙を送っている。
ようやく手紙を書く気力が湧いたよ。このところ大忙しだったんだ。でもやり甲斐はあるし、刺激を受けている。家で働いていると、空気がピリピリすることもあるけれどね。家じゅうに布地やピンなんかが散らばっていると、どうもそうなってしまうんだ……俺たちのジーンズやセレクトアイテムが、高級なヴィンテージショップに並ぶ日も近いと信じているよ。
実家に送ったもう一枚のハガキを見ると、すべてが本当に急ピッチで進んだことがよく伝わってくる。「なんと、このあいだ手紙を書いてから10日も経ってしまった。ジーンズの商売は……需要に供給が追いつかないところまで来ているよ」
こうして俺は初めて、一生懸命に働き、モチベーションを保ち、創造性を発揮し、自分だけのスタイルを確立すれば、やりたいことは何でもできると気がついた。
何かが始まろうとしていた。