ニュクス薬局は今年9月、同じ歌舞伎町2丁目内で移転している。テナント契約を更新せずに退去することは、店の移り変わりが激しい歌舞伎町では珍しいことではない。たった50m程度の引っ越しだったが、夜間病院に近くなったことで処方薬が売れ、売り上げが月間15%程度も伸びた。

営業時間を2時間短くしても売り上げを出せる

また、旧店舗では長時間勤務で倒れたこともあり、営業時間を変えた。以前は、祝日を含む火曜日~土曜日の午後8時から翌午前9時まで。それを2時間短くし、月曜日~金曜日の午後4時半から翌午前3時半にした。現在は土日が定休日だ。

この変更は、新店舗の近くにある夜間病院に合わせたものだ。特に月曜日に稼働するようになり、休み明けに病院に行くお客が来るようになった。営業時間を2時間短くしても、立地を選んだことで売り上げは伸び、柔軟な経営が功を奏した。

さらにニュクス薬局が、中沢さんの1人店舗だという強みもある。

雨の降る日も、雪の日も、多少、体調が悪くても、店を開けなければいけないのは大変だ。反面、他の人を使わず、かかる人件費は自分だけだ。

筆者撮影
営業時間は祝日を含む月曜日~金曜日の午後4時半から翌午前3時半まで。定休日は土日

今回の移転に伴う営業時間の変更は、副産物も生んだ。中沢さんの体調が「以前よりも、だいぶ良くなった」。帰宅後、「夕食」を済ませ、できるだけ午前7時ごろをめどにベッドに入る。そこから7時間程度の睡眠を確保できるようになった。

「中沢さんがいい」という常連に支えられている

いまでは歌舞伎町に根付き、多数の常連客に支えられている。世の中に移転を気にされる薬局が、どれほどあるだろうか。飲食店と異なり、そもそも薬局で顔を覚えてもらっている常連は、どれほどいるのだろうか。

ニュクス薬局のように深夜営業している薬局は、近隣のエリアにもある。薬を受け取るだけなら、どこでも同じだ。しかし冒頭で紹介した美帆さんは、ニュクス薬局を利用したいと、移転先を病院に問い合わせたそうだ。そうした問い合わせは、店主である中沢さんのところにも何件もあったという。

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商品棚の様子。コンドームを1枚50円でバラ売りしていたり、滋養強壮剤のボトルをキープできたりと、他の薬局にはない売り方も特徴の一つだ。

医者や美容師と異なり、特定の薬剤師が客に指名されることはあまりない。数が増えているチェーン店舗だと複数の薬剤師がいるから、誰が担当になるか分からない。

ところが、ニュクス薬局には中沢さんしかいない。だから絶対に会える。そして中沢さんに薬を出してもらえる。