互いに容認する姿勢が大切。でも、限界はある

次は「【2】相手が「不快」と感じる物事を知っており、その理由も理解している。そのうえで、自分は自分の道を歩く。相手もそれを否定しない」について。【1】を補足するような項目だが、要は「相手が『イヤだな、苦手だな』と思うことはできるだけしないよう心がけるが、お互いあまり神経質にならず、容認する気持ちを忘れない」ということだ。

先ほど挙げた「箸の使い方」あたりは、この【2】で回収できるかもしれない。だが、「汚さの許容範囲」については神経質になる人も多いようで、大きくズレていると結婚生活はイバラの道になるだろう。妥協案として思い付くのは「あなたの書斎だけは汚くてもいいけど、他の部屋はきれいにするよう心がけて」と協力をあおぐことくらいか。

続いて「【3】食の嗜好が合う」だが、何しろ日々の暮らしは1日2回~3回の食事によってまわっているのだから、その好みが配偶者と大きく異なっていたらやはりストレスになる。また、人生における貴重な非日常体験であり、特別な時間となる「旅行」でも「食」は非常に重要な要素だ。つまり、食の嗜好が合わないと旅行が格段につまらないものになってしまうのである。

正直、もし私の配偶者がヴィーガンだったりしたら、毎日が苦痛で仕方ないだろう。豚肉が大好きで、日々ラーメンや生姜焼き、トンカツ、チャンポンなどを食べることを至福としてきた男が、豚肉を食べられない女と一緒の生活をするようになったら……想像するだけで震えがくる。

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食べものの恨みは想像以上に恐ろしい

豚肉は、安価な動物性たんぱくであり、幅広い料理で活用されている食材だから、これを封じられたら相当なストレスだ。夫婦で別々のメニューを用意するにしても、それはそれで手間がかかるし、なんというか……家族としての一体感が失われてしまうように思う。「豚しゃぶ屋」「豚骨ラーメン屋」「トンカツ屋」など、豚料理メインの店で一緒に外食をする、という選択肢が失われてしまうのも痛い。

こんな男が豚肉を食べられない妻と結婚したとしよう。臨終を迎えたときに「お爺さん、最後に言いたいことは?」なんて聞かれたら、「あぁ、腹いっぱいトンカツを食いたかったぁ~」などと、コントみたいな発言を本気で残してしまうかもしれない。それほどまでに食べものの恨みは恐ろしいのである。

あと「辛いものが好き」「しょっぱいものが好き」「甘いものが好き」「酒が好き/酒が飲めない」といった食の嗜好についても、夫婦の平穏でくつろげる食卓を実現するためにぜひ擦り合わせておきたい。ただ、酒については、相手が飲めなくても大した問題にはならないカップルは多いのではないか。「酒は飲めないけど、酒席の雰囲気が好きだし、酒の肴も好き」という下戸は案外多い。さらに酒を飲んだ後はシラフのパートナーに運転を任せて、道中や帰宅してから感謝を伝えるといったことも可能だ。むしろ夫婦そろって酒好きで、どちらも記憶がなくなるまで飲んでしまう、みたいな夫婦よりもメリットは大きいかもしれない。