「完璧」を目指す人ほど自分を追い詰める

実際には、競争に負けようが他人からの評価が低かろうが、その人が存在することそのものの価値とはまったく関係がありませんが、つい混同してしまうのです。

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こうした話をすると、「他人は好き勝手言うものだ」「他人の評価なんか気にせず、自分の評価は自分で下せばいい」と思う人がいるかもしれませんが、自分自身に対する評価の基準が高すぎたら、やはり同じことです。

特に、周りの大人たちから「出来のいい」兄弟と比べられたり、不当に低く評価されたりしてきた人、あるいは常に完璧であること、優秀であることを求められてきた人は、ありのままの自分、頑張っていない自分を肯定することができず、ギリギリまで自分を追いつめてしまうことが非常に多いのです。

競争に勝って得られる幸福感・安心感は「一過性」

自己肯定感というのは、「完璧でなくても優秀でなくても競争に負けても、自分はこれでいい」「自分は自分であって大丈夫」という感覚のことです。

自己肯定感が持てない人は、とても優しかったり、頑張り屋だったり、賢かったり、仕事ができたり、優れたところがたくさんあるにもかかわらず、周りからの評価も高いのに、「自分なんて」が口癖だったりします。

ほかの人からすると「もう十分じゃない?」「それ以上、何を求めるの?」と思ってしまいますが、本人は至って真面目。

そして、自分で自分のことを「OK」と思うことができない分、「優秀である」「成績がよい」といった評価を得て、他人から「OK」と言ってもらうことで、「自分に価値がある」ことを証明しようとするため、勉強や仕事にものすごくのめり込みやすいのです。

それこそ、狂乱的なまでの努力をします。

ところが、そんな人は、どれほどいい学校や会社に入り、重要なポストに抜擢され、成果を上げても、「嬉しい」「認められた」と喜ぶより、「なんとかノルマを達成できてほっとした」と思っていたりします。

喜びよりも、安心。それも、束の間の安心にすぎず、すぐに「次はうまくやれるだろうか」「もっと優秀な人が現れて、自分の存在価値がなくなるんじゃないだろうか」といった不安にさいなまれてしまうのです。

競争の世界の中で、評価のプレッシャーに常にさらされている間は、いつまでたっても「これでいいや」と思えないのです。