69歳の時、脳梗塞で半身まひになった男性も奇跡の回復

人工芝のフロアを歩く“自主トレ”をしていたKさん(77)も、そのように段階を踏んで機能を回復したひとりです。

「私は69歳の時に脳梗塞を発症しました。幸い命は助かりましたが、左半身がまひしましてね。介助なしでは歩くことはもちろん、立つこともできなくなってしまったんです」

要介護2と判定され、自宅での介護生活が始まりましたが、Kさんはそれまで地元のソフトボールチームでプレーするなど、体を動かすことが大好きでした。それが突然、自力ではトイレに行くことも、入浴することもできなくなったのです。

「このままだと寝たきりになってしまう、と落ち込みました」

そんなKさんに、気持ちを前向きにする機会が訪れます。

「ベッドでテレビを見ていたところ、長嶋茂雄さん(85)がリハビリに取り組む様子が映ったんです。長嶋さんも脳梗塞で倒れられた。でも、懸命にリハビリを重ね、元気な姿を見せられるようになりました。あの長嶋さんが頑張っておられるのだから私も、と思ったのです」

すぐにご家族にリハビリのできる施設を探してもらい「自宅から通える機能回復に特化したデイサービス」という求める条件にぴったりのアクティと出会ったのだそうです。

「リハビリのスタートはレッドコードの座位でのエクササイズでした。左足はまひで真っ直ぐにできない状態でしたし、思うように動いてくれない。もどかしさが募りましたが、辛抱して続けました。

撮影=相沢光一

午前のコースに週3回ほど通い、レッドコード座位のメニューをこなせるまで2年ほどかかりました。その後、立位に移り、補助つきのウオーキングマシン、ストックを使った歩行リハビリを行うといった段階を経て、自力で立って歩けるようになるまで6年かかったそうです。

「今もまひは残っていますから慎重にゆっくりにしか歩けませんが、もっとよくなりたいと思ってリハビリメニューを続けています。でも、今は介助なしでトイレに行けますし、風呂にも入れるようになりました。ここに通っていなかったら、と思うとゾッとしますよ」

要介護2だったKさんの要介護度は要支援1に改善。今は要介護卒業を目指しているそうです。

前田さんは言います。

「私どもの目標は、利用者の方がKさんのように前向きになっていただくことです。もちろん、体の状態によってリハビリを重ねても現状維持にとどまる方はおられますし、リハビリはつらさが伴いますから、しんどいといって辞める方もいらっしゃいます。でも、少しでも心身の状態をよくしようと、前向きの気持ちを持っておられる方は少なくありません。その受け皿としての役割を果たしたいと思っているんです」