恐怖政治のもとで生まれた忖度の空気

2008年に始まった「ふるさと納税」は、当時の菅義偉総務相の肝いりの政策でした。その後官房長官となった菅総務大臣は、総務省の自治税務局の局長に、寄付上限額の倍増を指示します。しかし、上限額を倍にすれば、自治体から寄付者への返礼品が高額になり、競争が過熱する可能性があります。それを懸念して指摘した自治税務局長は、すぐさま異動させられました。これはまさに恐怖政治であり、官僚も委縮してしまいます。

「Go Toキャンペーン」にしても、経産省だけでなく関係する国交省や農水省などとしっかり協議しながら進めていれば、あとから出た問題の多くは避けられたはずですが、官邸の意向で見切り発車となりました。さらには、政府の分科会(新型コロナウイルス感染症対策分科会)の尾身茂会長らは、「Go Toトラベル」の開始を遅らせるように進言したそうですが、菅官房長官、二階俊博自民党幹事長は聞き入れず、実施に踏み切りました。その結果は、みなさんのご存じのとおりです。

こういった恐怖政治の結果、何が生まれるかというと、忖度そんたくの空気なのです。虚偽答弁が政治家の指示なのか、官僚の忖度なのかは不明です。ですが、官僚にも家族や生活があり、キャリアを失いたくないのは当然です。こうした背景があるからこそ、政治家の不始末や不祥事を隠そうとして、虚偽の答弁になっていくのです。

優秀な人材離れが招く官僚の劣化

池上彰『これが日本の正体! 池上彰への42の質問』(大和書房)

政治主導が大事だとよくいわれます。官僚は試験に合格して官僚となったのであって、国民から選ばれたわけではない。一方の政治家は、国民の代表として選ばれている。だから、さまざまなことは政治家の主導のもとに決めていけばいい、ということです。

建前としては、その通りです。しかし、政治家のレベルが低いと、とんでもないことが起こってしまいます。さらには、国のために働きたいと思って、難関を突破した優秀な官僚も、政治家の尻ぬぐいに追われていては、やる気を失ってしまいます。

かつては東大生の一番人気だった官僚職ですが、現在はそうではありません。2021年度の国家公務員総合職の合格率は7.8倍と過去最低。そのうち東京大学出身者の割合も14%と6年連続で減少しています。優秀な人材が離れていけば、官僚のレベルもまた低くなっていくことになります。

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