※本稿は、森達也・望月衣塑子『ジャーナリズムの役割は空気を壊すこと』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
首相会見での質問は官邸が事前チェック
【森】これは僕も含めてだけど、一般人の立場として首相や官房長官の記者会見を見ているとなかなかわかりづらいところがあります。特にわかりづらいのが事前通告のルール。2020年9月に菅義偉官房長官(当時)が開いた自民党総裁選の出馬会見での望月さんの質問「首相になったとしたら都合の悪い質問をされたとしてもしっかりお答えいただけるのでしょうか?」などは、事前に伝えていないですよね。
【望月】そうですね。
【森】そもそものルールとして、首相や官房長官の記者会見において、記者たちは質問を事前に通告しなければならないのですか。
【望月】菅さんが首相になってから記者会見の司会をしていたのは史上初の女性内閣広報官となった山田真貴子さん(2021年3月からは小野日子さんが代わって就任、現在は四方敬之さん)です。うち(東京新聞)の番記者に聞いてみたところ、首相の記者会見の前に、官邸報道室は、各社の質問を細かくチェックしていたらしいです。
事前通告の拒否や厳しい質問は当ててもらえない
【森】それ、文書ではなく口頭のチェックですよね。
【望月】そうです。それで実際に記者会見で事前にチェックしたものとは違う質問をすると「なんで違う質問をするんですか!」と言われると。このような事前チェックが今やすっかり慣例化されてしまっています。
うちの番記者は官邸報道室に聞かれても返答を断っていますが、そうすると記者会見で質問者として当ててもらえません。朝日新聞も「応じられません」と断っているから当ててもらえない。その他にも事前に通告をしても、その質問内容が厳しいものだと当ててもらえないとも聞いています。
【森】要するに、事前に質問をチェックして、答えたくない質問は排除しているということになります。
【望月】このような質問者の偏りはおかしいと私もツイッターで何度かつぶやきましたけど、今のところまったく変化はないですね。