霞が関全体に広がる事前通告の「慣例」
これまで法務省の会見に行ったことはなかったのですが、上川大臣の会見に出てみると、会見に参加している記者たちに事前に質問を通告させているようでした。秘書官の検事から「他社は事前に通告してもらっていて、大臣は官僚答弁するだけでなく、事前にその答弁には自分なりの手を入れている」と言われていましたが、社会部記者が多い法務省でも事前の質問通告が慣例化していることを知りショックを受けました。
【森】つまり、この手法が拡散している。それは問題です。
【望月】政治部記者だから政治家の顔色をうかがって、事前通告の要請に応えているのだろうが、本来会見は権力者とメディアの真剣勝負の場だからそれはないよな、とこれまで思って官房長官会見に臨んでいた私からすると、それはショッキングな光景でした。
官房長官会見だけではなく、安倍前政権の7年8カ月の中で、社会部系の記者が多い法務省の大臣会見までも事前通告を「慣例」として、当然の如く受け入れていました。
出来レースのような記者会見の問題点
東京新聞の法務省担当は、亡くなった市川隆太記者含め、権力に噛みつく記者が少なからずいました。担当していた記者にも確認しましたが、昔は事前通告はまったくやっていなかったそうです。おそらく安倍前長期政権での首相会見や官房長官会見の空気が、官邸だけでなく、霞が関全体にまん延しているのだろうなと感じました。
私は「それはできません。そんなことをやっているからダメになるんです」との趣旨で事前通告を断りました。法務省は、望月だからそれはそうかと思ったのか、その後、事前通告を求めることはなくなりましたし、それでもしっかりと上川法相が答えてくれています。権力との馴れ合いを許すかどうかは、記者の気構えでどうにでもなると思うので、事前通告は当たり前という習慣は本当に変えていってほしいです。