「優秀な学生が集まらない」霞が関官僚のほころび
岸田文雄政権が総選挙を乗り切り、第2次岸田内閣が11月10日に発足したが、あらためて政権を支える霞が関官僚とのパワーバランスが問われている。
安倍晋三政権から続く強権的な「官邸主導」の政治体制の下で、中央省庁の官僚の士気は著しく低下、若手官僚の退職者が続出する一方、総合職(キャリア官僚)志望者も激減し、たぐいまれな有能集団のほころびが顕著になった。自由闊達な議論が失われ「物言えば唇寒し」の中、コロナ禍での行政の不手際や法案をめぐる失態も目立っている。
岸田政権は、「聞く力」を発揮して、「もう、やってらんない」とこぼす萎えた官僚群を奮い立たせ、「政」と「官」との関係を修復できなければ、足元から揺らぐことになりかねない。
総務省職員の3割は「仕事に誇りもてず」
菅義偉政権下で最も傷ついた中央省庁の筆頭が、菅首相のエンジンとなっていた総務省だったのは皮肉というしかない。
菅首相の長男が勤務する放送事業会社「東北新社」に始まった「総務省接待事件」は、ナンバー2の総務審議官をはじめ前代未聞の大量処分に発展し、情報通信行政を担ってきた中核の幹部職員が軒並み霞が関を去るという異常事態に陥った。
「接待事件」が行政に与えた影響を検証していた第三者委員会「情報通信行政検証委員会」(座長・吉野弦太弁護士)は、菅政権が退陣する直前の10月1日に最終報告書をまとめ、「公務のあるべき姿を見失っていた」と厳しく指弾し、国民の信頼を損なったことを強調、情報通信行政が負った傷の深さを浮き彫りにした。
最終報告書は、総務省を揺るがした「接待事件」に一応の区切りをつけたが、実は、そっと添えられた資料の中に、総務省職員の「士気の低下」が歴然とわかる調査報告があった。