市井の子供をテレビスタジオに連れてきて、トークさせても番組的にはほとんど成立しない。しかしテレビによく出演する子役は、いわゆる視聴者が求める「子供らしさ」を完全に備えている。これが矢澤氏の言う「完成されている」という意味だ。子役は、子供らしい目線、子供らしい発想、そして何よりも可愛い仕草やおしゃべりなどが、テレビカメラの前できちんと表現できるのである。

しかし子役だって大勢いる。その中でキラ星のように輝いている愛菜ちゃんの優位性は一体どこにあるのだろうか。この点に関して、北條プロデューサーは、「彼女が他の子たちと違うところは、スイッチのオン・オフを明確に切り替えられる点にある」と喝破している。子供でいていい状況では子供のままでいて、大人に取り巻かれ、相応の対応をしなければならない状況では、きちんとその要望に応えられる。彼女には、場の空気を敏感に読み取り、即座に適応する能力があるのだろう。

この種の才は無論、タレント事務所および両親の指導のたまものともいえるかもしれない。だが、状況に応じて、スイッチをオン・オフできるのは、女優としての天賦の資質を持っているからと見えてしまう。いわゆる「天才」なのではないかと思ってしまう。

ところが、愛菜ちゃんの所属するジョビィキッズプロダクション(以下ジョビィキッズ)代表取締役の土屋喜美氏によると、「愛菜は、天性が10%。残りの90%は努力です」という。ただ、彼女は、とにかく好奇心旺盛で、何でも本気で好きになって本気でやるというのだ。同社スクールゼネラルプロデューサーの大崎雅代氏は、このあたりの愛菜ちゃんの行動を次のように語る。「バラエティーではほんとに面白そうに、当人が楽しんでやっていますし、大人と話すときでも臆さず、きちんと自分の言葉でお話ができます」。

また、愛菜ちゃんの際立った特徴として、集中力や勉強熱心さには並外れたものがあるという。専務取締役であり、彼女のマネージャーを務める尾津喜世氏によると、「映画を観ているときや読書しているときの集中力は、非常に凄いものがあり、その世界に入り込んでいる際には、声をかけられないほどです」というのだ。