「プロの演技人」という自覚を植えつけるには

彼女の勉強熱心さを裏付ける一つのエピソードに読書量がある。あれだけの仕事をこなす超多忙少女にもかかわらず、彼女は毎日数冊の読書をこなし、多く読む日はなんと20冊も読破することがあるという。まだ小学1年生。字が読めるかどうかの子供がこれだけ大量の書籍を読んでいるのだ。まさに驚嘆するしかない。読書好きは父親譲りだそうで、面白いことに読書に関しては、父親がライバルだと公言しているという。

当然、演技に関しても極めて熱心で、「『ここではどういうふうにしたほうがいいですか?』『もう1回それをやってみてもいいですか?』など彼女は芝居に対して一つひとつ堀り下げて考えている」と、土屋氏は語る。このような勉強熱心さが年齢不相応ともいえる豊富な引き出しを擁し、ドラマ「Mother」で見せた迫真の「泣きの演技」へと結実するのだろう。

さらに、彼女の優れた特徴として強靭な精神力があると、土屋氏は指摘する。氏は、「子供たちを指導してきて一番難しいと思うことは何かというと、やはり精神力の強さです」と言い、愛菜ちゃんの並外れた強靭な精神力を「強み」として指摘する。

一般に演技の技術は、修練を積めば何とかなるのだそうだ。だが、心の強さというのはなかなか鍛えるのが難しいという。この業界ではオーディションがつきもので、結果として落選することは日常茶飯事である。そのときに、落ち込んでしまって、もうやりたくないと放棄してしまうのか、それをはね返して次にチャレンジするのかによって、その後の成長は大きく違ってくる。信じられないことに現在、大ブレーク中の愛菜ちゃんもオーディションには落ちまくった過去があるという。その数は実に50~60回にも上る。

こんなに落ちてしまったら自分には才能がないのではないか、と本人も親も挫けてしまいそうだ。だが、彼女の長所は、東京のオーディションに落ちたときに悔し涙にくれながらも、大阪への帰りの新幹線の中できっちりと反省会を行う点にあった。母親とどこが悪かったのかをきちんと分析し、今度はこういうふうに取り組んでみようと失敗を糧に、それをバネに変える力を持っていたのだ。つまり彼女の優位性は、超人的ともいえる強靭な精神力と失敗を恐れずそれを反省材料として成功へとつなげていく向上心にあったのである。