非資金利益への転換が必要と言われた

銀行の純利益は、大手行、地域銀行とも、時系列でみて減少傾向にある。2013年4月以降、日銀の量的・質的金融緩和政策の下で、預貸金利鞘は縮小を続けてきた。2016年1月のマイナス金利の導入で、金融機関の収益力がさらに低下した。

野口悠紀雄『データエコノミー入門 激変するマネー、銀行、企業』(PHP新書)

今後の人口動態などを考えると、資金需要が今後拡大していくとは思えない。貸出残高を増やすことが難しく、さらに利鞘も縮小するので、このままでは、銀行業は構造不況業種になってしまう。

預貸金利鞘モデルが崩壊したため、銀行のビジネスモデルを非資金利益モデルへと転換することが必要といわれた。欧米の有力銀行などは、こうした収益のウエイトが高いので、日本の銀行の収益構造もそうなるべきだとの議論だ。

非資金利益のなかでも、「役務取引等利益」の増大が期待された。ここでいう「役務」とは、投資信託販売、保険窓口販売、コンサルティングなどだ。この他に、シンジケート・ローン、債権流動化、M&A等、債券引受等、為替業務などがある。

銀行による投資信託販売業務は、1998年12月に解禁された。現在では投資信託販売総額の4分の1強のシェアを占めるに至っている(証券会社のシェアが4分の3弱)。保険窓口販売業務は、2007年12月から全面解禁された。

大手行では、役務取引等利益は2兆円弱だ(国内業務、国際業務の合計)。18年3月期では、資金利益が全体の62%であるのに対して、役務取引等利益が27%と、資金利益の半分近くになっている。欧米では役務取引等利益の比率が高いので、大手銀行は、そうした姿に近づいているとも言える。ところが、地域銀行では、資金利益が87%、役務取引等利益が13%と、役務の比率が低いことが問題だ。

ごく少数の企業がビッグデータを握る世界

これまでビッグデータは、検索サービスやメールのサービス、あるいはSNSを通じて無料で集められてきた。GoogleにしてもFacebookにしても、全世界で数十億人というオーダーの利用者を相手に、サービスを提供している。現在のビッグデータの世界は、これら「プラットフォーム企業」と呼ばれる少数の企業によって支配されている。

「データの時代」と言われるが、日本には、アメリカや中国のプラットフォーム企業のようにビッグデータを集められる企業が存在しない。今後も、そういうサービスが登場するかどうかは分からない。多分、登場しないだろう。