ストレスを抱えている状態は衝動買いにつながりやすい

脳科学的な分析によると、疲れているとき、落ち込んでいるとき、寝不足なとき、ストレスを抱えているときは、衝動買いしやすいという。

脳は人体の中でも最もエネルギーを必要とする臓器で、脳の重さは体重の約2%しかない。それにもかかわらず、1日に消費するエネルギー量は体全体が使う総エネルギーの20%を占める。

そこで、脳は省エネのため、反射や直感で物事を判断したり、重大な決断を先送りしたりするようにできている。

がんという重篤な病気になってしまった患者さんは、ある意味、非日常の世界に放り込まれてしまったようなものだ。それが大きなストレスとなり、その状態で買い物をすると、冷静で合理的な判断ができず、衝動買いにつながりやすくなるのは、がん患者さん「あるある」かもしれない。

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衝動買いしたモノが、もともと自分が欲しかったものや必要なもので、自分の懐具合に見合っており、ストレス解消の効果があるものであれば問題はない。それによって、「明日また頑張ろう」といった気持ちの張り合いになれば良いのだ。お金は使わなければ、ただの日本銀行券。使ってこそ価値がある。

しかし、「なんでこんなもの買っちゃったんだろう」と後悔するケースも多いはずだ。

そして最近、筆者が危惧しているのは、緊急事態宣言明けの人々の消費行動である。

長期にわたる自粛生活を経て、少しずつコロナ前の日常生活が戻りつつある。そんな緊張感やストレスを抱えた生活から脱出できた解放感や安心感が、小木さんやがん患者のような衝動買いや財布の紐の緩みにつながらないとも限らない。

生活防衛の意識の高まりは強いが、消費がストレス発散になる人も

もちろん、先々のことを考え、引き続き堅実な生活を送る賢い消費者も多い。

「マネーフォワード」が実施した「コロナ禍の個人の家計実態調査2021」によると、コロナによって、全体の約8割が、「生活防衛の意識が高まった(やや高まった)」と回答。そのうち約2割が、生活防衛のためにNISAや投資信託といった「投資を始めた」、1割が「貯金を始めた」という。

さらに、生活防衛の意識が高まった人のうち、なんと約9割が「コロナ収束後も、生活防衛を継続したい」と回答している。

実際、コロナ禍で、筆者のところに家計相談を希望する方も着実に増えた。今はとくにお金に困っているわけではないが、何かあった場合の備えやこれから将来にわたって大丈夫かどうか確認しておきたいといった方が多い。

FPとして独立して四半世紀近くになるが、今ほど、自分の生活は自分自身で守らなければという意識の高まりを実感した時はない。

また、同調査によると、支出状況の変化についても、減少した支出は、1位「交際費」、2位「趣味・娯楽」、3位「交通費」。増加した支出は、1位「水道・光熱費」、2位「食費」、3位「日用品」となっている。

巣ごもり消費など、消費のスタイルや使いみちが変わっただけで、消費行動自体はあまり変化がないような気がするので、収支はトントンかやや節約できている印象はある。しかし、約半数は「新型コロナが収束しても、支出状況はもとに戻らないと思う」と回答しており、引き続き、家計の引き締め傾向は強いようだ。

とはいえ、この調査は、同社の家計簿アプリ「マネーフォワード ME」の利用者を対象にしたものである。元々お金に関する「意識高い系」の人々の消費行動の結果であることも念頭に置いておく必要がある。