車、ブランド品、旅行、マイホーム。がん患者の衝動買いは止まらない
筆者も、10年以上前に乳がん告知を受け、現在も年1回、定期検診を受けている。だから、小木さんの気持ちは痛いほどよく分かる。一度、がんを経験した者にとって恐ろしいのは「再発・転移」だ。どれだけ罹患前と変わらず、日常生活が送れるようになっても、再びがんになる可能性はゼロではない。そもそも、最初に告知を受けたときも、「まさか、自分ががんになるなんて」と愕然とするくらい元気なはずだった。
だから、定期検診の結果を聞くときは、いまだにドキドキする。再発する場合、最初にがんと診断された後、1~2年内が多いので、1年目であればなおさらだろう。
ちなみに、FPである筆者は、がん告知を受けた翌年、マイホーム(4LDKの分譲マンション)をキャッシュで購入した。小木さんに負けず劣らず、人生最大の買い物だろう(夫名義なので、正確には、夫に「買ってもらった」ことになるのだが)。
診断時に担当医から5年相対生存率50%と告げられた筆者がなぜ家を買ったのか。それは、「そんなに長生きできないなら、せめてキレイなところで死にたい」と、切に願ったからだった。
今振り返ってみると、もしがん告知を受けていなければ、いまだに購入していないかもしれない。がん告知に背中を押されたと言えなくもない。いずれは、購入するつもりで結婚当初からお金を貯めていたし、あの時、買ってよかったと満足している。後悔もない。
ただし、治療中で体調が悪い時、物件選びや引っ越しの準備、内装の打ち合わせ、家具・家電の購入などは、本当に大変だった。みなさんには、マイホームを購入するなら、治療や体調が落ち着いてからをお勧めしたい。
FP兼サバイバーとして多くの方と接する中で気付くのは、その額の多寡は違えども、がん告知後やがん検診後などに衝動的にお金を使ってしまう人が少なくないことだ。
「保険の給付金がたくさんもらえたから」
「がん治療を頑張ったご褒美に」
「つらい気持ちを紛らわせたくて」
ブランドバッグ、靴、洋服、アクセサリー、高級家具などを衝動買いする。もしくは、旅行や趣味に大金を投じる。そうしたがん患者は少なくない。
「高額な医療費もかかっているし、仕事も辞めざるを得なくて収入もゼロになった。でも、とにかく気分を変えたくて引っ越ししてしまった! お金がない‼」
という家計相談にやってくる人もいる。