都内在住の30代の夫婦は共働きで手取り世帯月収は60万円近くあったが、育児のため妻は専業主婦に。その影響で月収は半減し、月3万円の赤字に転落。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは「共働き時代は夫婦別財布で家計管理もせず、それぞれ自由にお金を使っていました。奥さんは専業主婦になってもその支出習慣が抜けなかったことが赤字の主因です」という――。
口紅を塗る女性
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月3万円の赤字垂れ流すのに「資産の作り方教えて」の本末転倒

「家計は大丈夫だから、どう投資をすれば資産を作れるのか教えてほしい」

最近、こうした家計相談が増えています。投資に興味が向いている世の中の傾向が色濃く反映されています。投資に興味を持つことはよいと思いますが、家計や貯蓄などの根幹部分を軽視し、資産形成ばかりを考えて、目の前の家計はあまり気にしない偏向を感じるのです。

先日ご相談に来られた都内在住の会社員・金川昌弘さん(38歳・仮名)も、家計(節約)よりも投資を始めることが先、と考えていました。

聞けば、現状では家計は赤字。月の手取り世帯収入34万円に対して、支出はマンションの家賃10万円を含む37万円。ボーナス(年間80万円)で補塡ほてんしてなんとか回っている状況で、預貯金(120万円)も十分ではないため、万が一、お金が入り用になれば、家計はすぐさまピンチになってしまいそうな状態です。

この状況に危機を感じ、「まずは投資を」と思ったようですが、誰がみても今のまま投資を始めることは絶対にすべきではないのは明らかです。投資で伸ばして帳尻を合わせようという見え見えの意図は極めてリスクが高いです。

赤字の原因は正社員から専業主婦になった妻の浪費にあった

金川さん宅はなぜこのような本末転倒な状況になっているか。

原因は、妻の由紀子さん(36歳・仮名)の退職(正社員)にあるようでした。金川さんご夫婦はもともと共働き。長男(5歳)と長女(1歳)を保育園に預け、由紀子さんも仕事を継続する予定でした。

長男出産後はなんとか仕事を続けていました。しかし、2人目となる長女を出産し、育児休業期間に入ってから1歳児が入園できる保育園を探したもののなかなか見つかりません。保活にも疲れを感じ、子供2人が小学生に上がるまでは、専業主婦でもよいのではないかと話し合ったうえ、育児休業を延長せず、終了日に退職しました。

退職後は収入が半減する(以前は手取り世帯月収が60万円近くあった)ことはわかっていましたが、支出がなかなか減らせません。

第一の問題点は、それまでは夫婦それぞれで収入を管理し、世帯としての支出が把握できていなかったこと(つまり、2人とも自由に使っていた)。第二は、妻の支出が以前から多く、専業主婦になった今も多いこと。

化粧品、同僚やママ友との交際費、娯楽費などが、共働きの時ほどではないにしろ、かかっているのです。それに疑いを持たず、当たり前にお金を使っているため、支出は当然のように減りません。昌弘さんは気になる支出を節約しはじめていても、妻はそのことに気が付いていない様子です。そして昌弘さんは優しい方なのか、妻に支出を抑えてほしいことを言えないでいます。