それが、ミッドライフ・クライシスです。特に、人生の前半(40代くらいまで)に、頑張って会社や社会に適合してきた人、すなわち「自分の中にインストールされた会社や社会のルールを、疑うことなく素直に受け入れてきた人」ほど、ミッドライフ・クライシスに陥りやすいといわれています。

その結果、うつ状態になってしまったり、あるとき突然、仕事や家庭を放り出してしまったりする人も少なくありません。

●素直な良い子になろうとする人。
●会社に求められる人材であろうとする人。
●自分本位の「ゆたかさ」を模索してこなかった人。

「40代で幸福な人生を諦めてしまう人」はこうした特徴を持っています。変化に応じて価値観をシフトすることができず、ミッドライフ・クライシスを契機に、「あの時まではよかったな」と、それ以降の人生を自分で変化させる可能性に背を向けてしまうのです。

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社会のルールの中で生きる落とし穴

私たちは子どもの頃から、親や学校、メディアなどによって「素直な良い子であること」を求められ、「社会で成功すること」「社会の役に立つこと」「競争に勝つこと」を目指すよう教育されます。

会社員として働き始めると、「会社に求められる人材であること、会社が求める価値を作り出すことこそが善である」という価値観、ルールを刷り込まれています。

しかし、当然のことながら、それらは「自分が本当に心から望んでいること」「自分の人生にとっての善」とは異なります。

もちろん、社会全体の経済を回すには会社という形態が必要であり、「会社や社会のルールを、自分の中にある程度インストールしておく」というのは、会社や社会の中で生きのびていくためには、ある程度有用なことです。

ですが、それらをフルインストールして自分の価値観を完全に上書きし、人生のコントロール権を手放してしまうのは考えものといえます。

会社や社会の価値観、ルールは、決してあなたを本当の意味で幸せにはしてくれません。それらは、基本的には競争原理に基づいているからです。

競争に勝てばお金や名誉が手に入り、一時的に自己評価が上がるかもしれませんが、そこには常に「今度は負けるかもしれない」「負けたらどうなるんだろう」という不安がつきまといますし、実際、人は永遠に「勝ち続ける」ことはできません。

競争に勝つことで得られる幸せは、決して長続きはしないのです。

自分だけのアイデンティを持つことは難しいのか

また、会社や社会、あるいは「会社や社会のルールを脳内にフルインストールした他人」は、あなたに「良き歯車」であることを求め、その単一的な価値観に基づいて、あなたを一方的にジャッジします。

社会からの要求に応えられている間は、それなりにいい評価が下され、承認欲求が満たされるかもしれませんが、競争に負けたりミスをしたり「欠点」がクローズアップされたりすると、たちまちあなたには厳しい評価が下されてしまいます。