30代後半から50代にかけての中年期に心の不調を訴える人が多くいる。心療内科医の鈴木裕介さんは「ミッドライフ・クライシスと呼ばれる精神的危機で、約80%の人が経験するといわれている。『自分の人生は無意味だったのではないか』といった不安を訴える人が多いが、解決策はある」という――。

※本稿は、鈴木裕介『我慢して生きるほど人生は長くない』(アスコム)の一部を再編集したものです。

ストレスを感じた表情をしたビジネスマン
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40代で「幸福な人生を諦める人」が増えるワケ

あなたは、「ミッドライフ・クライシス」という言葉をご存じでしょうか。

これは、30代後半から50代にかけての中年期に訪れる深刻な精神的危機のことで、男女を問わず、約80%の人が経験するといわれています。

たとえば、「競争に勝ち、いい学校、いい会社に入って出世すること」「働いて少しでも多くのお金を稼ぎ、いい暮らしをすること」「会社や社会に求められる人材になり、ときには自分の時間や生活を犠牲にしても、会社の利益に貢献すること」などを「正しい」「幸せ」と信じて生きてきた人が、人生の後半にさしかかったとき、それまでの生き方に疑問を持ったり、価値がないと感じたりすることがあります。

同時に、「自分らしい生き方をしたい」という気持ちが高まり、「今、自分がやっていることは、自分が本当に求めていることなのか」「もっと良い生き方があるのではないか」と、自分の人生のあり方や意味を問い直さずにいられなくなるのです。

中年期は不安や恐怖に襲われやすい

一方で、中年期にさしかかると、どうしても若い頃に比べて体力や気力、記憶力、容姿などが衰えてきます。これまで頼りにしていた「必勝パターン」が通用しなくなり、能力の限界を感じることも多くなってくるでしょう。

そして「自分は会社や社会にとって要らない人間なのではないか」と考え、不安や恐怖に襲われたり、苦しんだりするようになります。

同時に、「人生は有限であり、元気に動ける時間も限られている」と実感し、「このまま、今までと同じように生き続けていいのだろうか」「自分の人生は無意味なのではないか」という思いがどんどん強くなっていきます。