◆この章のまとめ◆

何ごとにつけ、最高ではないけれどもそこそこのレベル、つまり「上の下」のあたりにいる人間は、過度に「リアリズムの思想」を信奉しがちです。そういう人間は、プライドとコンプレックスの板ばさみになっていて、年少者の前で自説を語るのを非常に好みます。しかし、「上の下」の人間に、「上の上」の人間を見抜くことはできません。

「たいしたことない」ように見えた若者の前で、「メジャーレーベルからCD出そうたって……」とか「外国でМBAを取るっていっても……」などとぶった。そうしたら相手の若者は、既にメジャーデビューが決まっている歌手だったり、MBAホルダーだったりした――そんな恥ずかしい例は、珍しくありません。

「リアリズムの思想」を抱くのは個人の自由です。しかしそれを、軽率に語ることは、慎みたいものです。

※この連載は、プレジデント社の新刊『光源氏になってはいけない』から一部をネット掲載用に抜粋したものです。