「よいところがあれば自分や他人を許す」姿勢が大事

心理学には「白と黒の間にはグレーがある」「グレーにも、濃いグレーもあれば薄いグレーもある」と理解できるようになることが人間的な成熟であるとする考え方があり、これを「認知的成熟」といいます。

社会心理学者の岡本浩一氏は「曖昧な状況下や白か黒かはっきりしない状況になったときに、不安な気持ちが強くなって慌てて白か黒か決めようとする人は、知的な意味での成熟度が低いのだ」と言います。

これを「認知的複雑性」といい、複雑な状態をいかに我慢できるかが、人間の成熟度を計るものさしになります。大人になるというのは曖昧さに耐えられるようになることなのです。

二分割思考で「この本はほとんどダメだ、使えない」と思ってしまうとその本は読む価値がまったくないという結論になるでしょう。しかし「この本に書いてあることの80%は無駄だが、20%は参考になった」と考えた時には、「まあ、20%役に立つならいいか」と思えてくるものです。

よいか悪いかをはっきり決めてしまえば楽ですし、「よいところもあれば悪いところもある」などと言うと優柔不断と批判されることもあるでしょう。しかし「正解はこれだ」と決めつけてしまうと、そうでない状況が生じた時にストレスで苦しむことになります。

それ以上に悪いところがあっても、よいところもあれば自分や他人を許す姿勢が適応障害の予防になります。

「こうでなければならない」という考えの人は注意

【完璧主義】

「完璧主義」の思考パターンは「100点でなければ0点と同じで、意味がない」というものです。

完璧主義の人は、仕事においてもすべてに完璧を目指し、会議で出す書類作成一つにもいたずらに時間を費やしてしまいます。細かい部分に目が向いて欠点ばかりが気になります。

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しかし、実際の世の中は「別に100点を取らなくてもいい」ことばかりです。受験でも100点満点をとる必要はなく、合格最低点を取れば合格できるのです。あらゆる面で完璧ばかりを求めるようになると、これがストレス要因となって、適応障害やうつ病を引き起こすことにもなるのです。

【かくあるべし思考】

「かくあるべし」、つまり「こうでなければならない」という考え方が強すぎるのも、適応障害やうつ病になりやすいパターンです。

何事においても「~すべきである」「~しなければならない」といった考えに固執してしまうと「こんなこともあるかもしれない、あんなこともあるかもしれない」といった柔軟な考え方ができなくなります。そして自分の考えと異なることが起きた時にはやはり大きなストレスがかかってしまいます。