感染拡大の原因のひとつは「直箸」

飛沫感染でうつる新型コロナが広がった当初のことを思い出してみてください。注意喚起されたひとつが「直箸じかばし」だったのを覚えていらっしゃるでしょうか。

日本や中国などのアジアでは、大皿料理が中心で、鍋を囲む機会も多くあります。大皿料理を自分の箸でみんなに取り分ける。鍋料理に自分の箸を直接入れて、おのおのが具材をつつき合う。これを「直箸」といいますが、欧米にはない文化なのです。

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つまり、こうした食文化の違いが日本における歯周病の感染リスクを高めているわけです。たとえば、自分が食べている箸やスプーンで子どもに食べさせる。パンやコロッケなど、自分がかじったものを家族や友達とシェアして食べる。

缶ジュースやペットボトルを回し飲みする。グラスの同じ場所から飲む、あるいは同じストローで飲む。これらもすべて唾液感染を起こす行為です。つまり、食生活のなかでごく普通にしてきたことが、じつは見方を変えれば唾液交換という感染リスクのオンパレードだったということなのです。

家族から移ることを家庭内感染といいますが、歯周病の家庭内感染は、こうした食事を介するケースがほとんどであることがわかっています。さらに、歯みがきに使う歯ブラシやコップなどを、家族や恋人同士で共用することも感染の原因になります。

気づかないうちに家族や恋人に移してしまう

新型コロナは「ウイルス」、歯周病は「細菌」という違いがあるため、ウイルスのほうがわずかな飛沫で感染する可能性が高くなりますが、注意すべきポイントは同じです。

しかし、現状における歯周病の一番の問題は、歯周病菌に感染しても、新型コロナのように発熱などの症状が出るわけではないので誰も気づかないこと。そして、ほとんどの人は歯周病菌がこうした唾液感染で移ることを知らずに生活しているということです。

とくに親子間の唾液感染は、子どもの細菌叢の育成にもかかわってきます。歯周病は、自分が歯を失う可能性がある病気だけで終わらないのです。家族や恋人、友達など、あなたの大事な人に移してしまう可能性がある感染症なのです。その感染は、生活習慣や愛情表現をすることで起こります。だから治療をしないまま放置してはいけないのです。