思考プログラムは体に馴染むまで繰り返す
それでは、論理思考力を身に付けるにはどうすればいいのだろう。
論理思考力を身に付けるには、本を読んだり、研修を受講するだけでは身に付かない。
思考プログラムというのは、再三申し上げているが、過去の体験の「インパクト×回数」でできあがっている。したがって、スポーツと同じように体に馴染むまでトレーニングを繰り返すことが大事だ。
特に私が重要だと感じているのが「絶対論感(※)」だ。論理に対する感覚と言おうか。論理的かどうかを瞬時に認識するスキルである。
私は「ロジカルシンキング」の専門書を執筆できるほどのレベルではないが、その物事が「理に適っているかどうか」ぐらいの判別は瞬時にできる。
誰かに何かを主張したいとき、「絶対論感」がある人なら、
「主張を裏付ける根拠が必要だし、そのデータも見つけておきたい」
とすぐに思いつく。大事なことは、そうしなければ説得力ある話し方にならないと感覚的にわかるかどうか、ということだ。
しかし「絶対論感」がない人は、何かを主張したいとき、立ち止まることなく、まず主張する。そして、主張してから「その主張を裏付ける根拠」を探しにいく。
「あなたは感覚的か、論理的か」と質問されて「どちらかというと論理的だ」と答えてから、なぜそう主張するのか、その根拠を後付けで考え始めたら、もうその時点で「絶対論感」がないと判断しよう。
いつも「根拠ありき」で発言しているのか、それとも「結論ありき」かを自己分析してみるのだ。
※「絶対論感」とは、「絶対音感」からインスパイアされた造語
思考のクセさえ修正すれば、必ず身に付くスキル
「根拠ありき」の習慣を身に付けるには、何かを結論付ける前に、いったん立ち止まって考える。そして根拠を探そうとするのだ。
このプロセスにおいて、因果関係のある根拠が見つからなければ、主張するのを思いとどまるといい。「衝動的にこう思ったが、よく考えてみると、思い込みのようだ。言わなくてよかった」となる。
また、「おそらくこうだろうが、データを集めてみないと、そうとは限らないかも」と思い、データを使って分析してみると、「そうか。そうなのか。統計データを見ると、私が主張しようとしていたことが必ずしも正しいとは言えない」と、このように思い直すことができる。
論理思考力は「思考のクセ」さえ修正すれば、必ず身に付くスキルだ。感覚的に判断してしまうクセのある人は、衝動をコントロールし、立ち止まる習慣さえ体得すれば問題ない。
一方「結論ありき」の態度は、マネジャーとして失格だ。すでに主張した後に「根拠」を探すわけだから、バイアスがかかった根拠を引っ張り出すことになる。このような悪いクセは、早急に直そう。そうでないと説得力のない主張を繰り返すことになる。
人が言い訳するときの思考プロセスと同じだ。「結論ありき」の態度だと、相手から信頼を得られない。