ただ2つ「全体と部分、部分と部分の関係」を捉える
それでは「絶対論感」があると何がわかるのだろうか。「絶対論感」とは、細かく分析する前の、瞬間的に判断するスキルなので、
①全体と部分の「包含関係」
②部分と部分の「因果関係」
この2つだけだ。
①の「包含関係」とは、物事の全体像を捉え、全体と、全体を構成する部分とが網羅的になっているか(もれなく、重複なくの関係となっているか)である。そして②の「因果関係」とは、部分と部分との関係が飛躍していないか(正しくつながっているか)である。
この2つのことが感覚的に知覚できれば、だいたい事足りる。ロジカルシンキング研修で勉強する事柄のほぼすべてが、この2つの要素の応用だからだ。
たとえば、誰かの話やコメントを聞いただけでも、
「なんかつじつまが合わない」
「そうとは言い切れないのでは?」
「それだけではない気がする」
「必ずそうなるのかな。偶然では?」
「抽象的すぎる」
「それは手段であって、目的じゃない」
「その順番でいいのかな」
という疑問をもつことができる。違和感を覚えることで、考える機会が得られる。考える機会があれば、検証するための行動をとることができる。
ここがとても大事なポイントだ。
なぜなら検証行動を繰り返すことで、論理思考力が鍛えられるからだ。
そしてロジカルシンキング研修などを受講し、理論武装すると、以下のように言語化できるようになってくる。
「それは結果であって、原因ではない」
「論点の異なるテーマが交じっている」
「前提条件が違うから、噛み合わない」
「仮説が論点とズレている」
「論理が飛躍している」
「偶然の必然化だ」……等々。
ロジカルな人ほど柔軟である理由
このように訓練によって「絶対論感」が身に付くと、いろいろなメリットがある。
説得力のある主張ができる。意思決定する際に迷いがなくなる。
仮説の精度を上げて挑戦できるし、失敗しても次に生かすことができる。
また、意外にも「絶対論感」をもっている人は「素直」になる。そして「柔軟」にもなる。「結論ありき」ではなく「根拠ありき」という思考プログラムが手に入るからだ。「根拠ありき」の態度であれば、自分が間違っているとわかると訂正する。
自分の主張を撤回するのは、誰でも気が引けることだろう。しかし論理思考力が高い人は、論理的でない態度をとり続けることのほうがしっくりこない。だから間違いは間違いだと言って撤回するのだ。
しかし論理思考力が低い人は「結論ありき」なので、自分の主張を曲げない。たとえ「つじつまが合わない」「一貫性がない」と指摘されても、都合のいい根拠をもち出して、自分の主張を通そうとする。このような人を、周囲は信頼しないだろう。マネジャーであれば、なおさらだ。
グーグルが開発した人工知能(アルファ碁ゼロ)が、囲碁の世界で人間を超えることができたのは、論理的なプログラムが搭載されていたからではない。
最初はでたらめに指し手を続けていたAIだが、膨大な失敗体験を通じて学び、囲碁のルールで「どうすれば勝つことができるか」を学習していったからだ。間違っていた自分を素直に認め、アップデートを続ける姿勢は、私たち人間も学ぶべきである。