「若いドライバーにスポーツカーを知って、乗っていただきたい」

筆者を含めてクルマ好きであれば「スポーツカーはいいな!」と思えるものの、国内ではトヨタ「ヤリス」(1位)や日産「ノート」(4位)などのコンパクトカーや、トヨタ「ハリアー」(9位)やホンダ「ヴェゼル」(10位)などのSUVが販売上位10車に名を連ねる。また、トヨタ「ルーミー」(2位)や「アルファード」(6位)などミニバンも根強い人気だ(出典:2021年8月/日本自動車販売協会連合会)。

そうしたなか、あえてトヨタとスバルが再び協業してスポーツカーを作り上げた意義はどこにあるのか、そして狙いは何か? GR86の開発責任者である末沢泰謙氏と、BRZの開発責任者である井上正彦氏をはじめ、開発陣にそれぞれお話を伺った。

【西村】GR86を開発された意義はなんでしょうか?

【末沢】GR86は4人乗り(BRZ含めて乗車定員は4名)で、軽量なFR(後輪駆動)方式とし、なおかつ車両価格を抑えました。本格的なスポーツカーがリーズナブルな価格帯で手に入るわけですから、若いドライバーにもっとスポーツカーを知って、そして乗っていただきたい、そんな想いで作り上げました。

【西村】BRZはいかがですか?

【井上】スバルは4輪駆動である4WD技術において自信をもっていますが、BRZではFR方式でいくことを今回も貫きました。搭載エンジンはスバルが新規に開発した水平対向4気筒2.4l(235PS/25.5kgf.m)で、世界トップレベルの軽量化と低重心化を達成しています。毎日手洗い洗車したくなる、そんな愛着が持てるクルマに仕上げました。

「王道をいく、大人のスポーツカーを狙った」デザイン

【西村】国内市場では、コンパクトカーやSUV、そしてミニバンの販売台数が多い状態が続いていますが、スポーツカーをどのようにアピールなさるのでしょうか?

【末沢】そうしたなかでも「スポーツカーが欲しい!」と仰るファンの方は一定数いらっしゃいます。しかも購入されるだけでなく、たとえば自分好みのデザインをもつホイールに交換されたり、ボディ各部にパーツを装着したりしてドレスアップをされる方や、タイヤやサスペンションを交換して走りの性能を特化させる方、さらにはサーキット走行をなさる方など多岐にわたります。ただ、そうしたユーザー層はミドルシニアの方々が多い。そこは理解しています。そのため、GR86では若いドライバーにも注目していただくアプローチやプロモーションを行う予定です。

【西村】デザイナーから見て新型はいかがでしょうか?

【GRデザイン松本宏一氏】スポーツカーだから、そして若いドライバーにも振り向いてもらいたからと、いわゆるヤンチャな(筆者注/派手さばかりが目立つ)デザインにはしたくなかった。王道をいく大人のスポーツカーを狙いました。具体的にはキャラクターライン(ボディに折り目をつけたようなアクセント)に頼らないシャープでグラマラスな造形として、年齢に関係なく見る人をハッとさせるようなデザインとなるようまとめています。

【スバル佐藤正哉氏】BRZにはスバルのアイデンティティであるヘキサゴン型グリルを初代に引き続き採用しました。ヘキサゴン(六角形)は自然界で安定したデザインであると同時にスバルの六連星をイメージしています。また、スーパーGT300クラスで活躍するレーシングマシンとのつながりを強調しています。

画像=筆者撮影
スーパーGT300クラスで活躍する、スバルのレーシングマシン