心のアンケートでSOSを出していた

山根夫妻から調査を依頼されたA校長は、「ちょうど今、ふれあい週間で、これから人権週間が始まるので、それを理由にそれとなく子供に聴き取りを行います」と請け負い、結果は毎週金曜日の夕方5時半に報告することになった。

報告のなかで学校側から、9月10日に実施した「心のアンケート」で、詩織さんが「友達関係に悩みがある」と書いていたことを知らされた。

「学校は9月10日の心のアンケートのあと、詩織に話を聞いて、A子とB子にいじめられていることを聞いていました。詩織はA子とB子には言わないでほしいと言っていたそうですが、担任のB先生は二人に伝えてしまったのです。9月14日、放課後の委員会活動で3人が集まった時に、当事者だけで話し合いをしたそうです。その時、A子とB子は詩織に謝罪していじめは解決したとB先生に報告したと言うのですが、とんでもないと思いました。詩織は、遺書を9月23日から書き始めていたからです。当事者同士で話し合いをさせた結果、解決どころか、エスカレートしたのだと思いました」(弘美さん)

遺書は、鍵がされた机の中で発見された(写真=母親提供)

弘美さんは、詩織さんが書いた心のアンケートのコピーをもらいたいと頼むと、「情報管理の手続き上、渡せない」「ご自身で市役所に取り寄せに行ってください」という回答だった。このあたりから、学校だけに任せていては本当のことはわからないかもしれないと思うようになったという。

「いやな予感は11月30日の時点でありました。夫が担任のB先生に『山根詩織がいじめられているのを知っていましたよね?』と聞いたら、『はい、知っていました』と即答しました。すると、A校長が『いやいやいやいや、B先生、そういうことではないですよね?』と制止したんです。B先生が口をつぐんでしまったので、私は『人が一人亡くなっているので、きちんと調査してください』とお願いしましたが、このあとの聴き取り調査の報告で学校から上がってくるのは、『9月にいじめは解決した』という話だけでした」(弘美さん)

リーダー格の女子4人に振り回されていた

学校任せにできないと思った弘美さんは、12月5日から詩織さんが亡くなったことを伏せたまま、同級生への聴き取り調査を始めた。そこで、学校で配られたクロームブック上で「詩織、まじキモイ」「ウザイ」「死んでほしい」などと書かれていたことがわかった。

「詩織の友達から聞いたことを伝えて、そのことを学校でも調べてほしいと頼みました。すると、実際にA子本人が先生に『チャット(ハングアウト)で悪口を書いていて、B子に送っていた』と認めました。それは二人だけのやりとりだけだったのですが、詩織のパソコンの調子が悪くて、その時は仲良くしていたB子の端末を借りて作業したときに、A子からB子に『まじキモイ』『ウザイ』『死ねばいいのに』などのメッセージが送られてきたのをたまたま見てしまったようです。戸惑った詩織が、友達のC子とD子に相談したことを、学校の聴き取り調査でC子とD子が話しています」(弘美さん)

保護者の話によると、A子・B子、C子・D子は、「6年生女子のスクールカーストの上位4人で、A子・B子コンビ、C子・D子コンビはライバル関係で何かと張り合っていた」という。詩織さんは誰とでも仲良くするタイプで、もとは4人と仲良しだった。

チャットで悪口を書かれたことをきっかけに、C子とD子と過ごすことが増えた詩織さんだったが、誘われればA子・B子とも遊んだり、帰ったりしていた。すると、C子・D子が「かばってやったのに、裏切り者」とクラスの同級生の前で絶交を宣言。どちらからも見放される形となり、同級生たちも4人の報復を恐れて、誰も表立っては詩織さんと仲良くできない状態に陥っていたという。