——この7月から月刊『文藝春秋』の編集長に就任しました。久々の現場はいかがですか。

【新谷】7月1日から異動になったんですけど、すっかり元気になっちゃいました。局長の職務は「マスト」でしたけど、雑誌作りは「ウォント」の仕事なので。やっぱり編集長の仕事がいちばんおもしろいんですよ。年次的には、すっごいイレギュラーな人事なんですけどね。私は9月で57歳になるのですが、後輩が2代続いて先にやって、その後に2人より年次の上の私が編集長に就くという。

——週刊誌と月刊誌では性格も異なりますが、新谷さんがつくるとなると、そこまで大きく内容が変わるわけではないのかなという気もします。

【新谷】人間をおもしろがるというところは同じかな。ただ、雑誌の性格的に『週刊文春』は政治家や官僚のダメなところを追及していく批判型。それに対し、『文藝春秋』は、じゃあ、どうすればいいのかという建設的な意見を提言していくビルド型。よく週刊誌と月刊誌はスクラップ・アンド・ビルドの関係だって言うんですけど、その両輪がしっかりバランスよく回っていくようなイメージは大事にしていきたいと思っています。

撮影=門間新弥

両極端な日本の言論状況をなんとかしたい

【新谷】『文藝春秋』の取材は基本的にすごくウエルカムなんですけど、『週刊文春』はすごく警戒される。うちは月刊誌で築いた人間関係を週刊誌で壊すみたいなところがあって、人間関係もスクラップ・アンド・ビルドなんですよ。でもメディアである以上、そのバランスはすごく大事だと思います。

——部数の目標もあるのですか。

【新谷】もちろん売れるに越したことはない。それを考えたら、中身はスクラップ型のほうがいいのかもしれない。でも、むしろビルド型の記事をどんどんやりたいと思っています。

今、日本の言論状況って、両極端じゃないですか。保守とリベラルが互いに届かないところから石を投げ合っているというか。この分断状況はなんとかしたい。だから、僭越な言い方になりますけど、『文藝春秋』がその真ん中に立って、両陣営から論客を連れてきて、意見をぶつけ合わせてもらう。

『週刊文春』の武器はスクープですが、『文藝春秋』の強みは渦中の当事者の肉声。普段はなかなか取材を受けてくれない人を引っ張り出す力だと思います。その強みを生かして、『週刊文春』と同様に、紙以外で稼げる仕組みもどんどん増やしていきたいですね。