「日本のど真ん中で本音を叫ぶ雑誌です」

——部下の前では、そういう所信表明をしたわけですね。

【新谷】はい、しました。創業者の菊池寛と、2代目の佐佐木茂索の肖像画が掲げてある大会議室で。原点に戻ろう、と。かつて『文藝春秋』は国民雑誌と呼ばれていた。この国の在りようについて、右にも左にも偏らず、自由な心持でスケールの大きなテーマを投げかけてきた。

新谷学『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』(光文社)
新谷学『獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論』(光文社)

私が以前、『文藝春秋』のデスクだったとき、当時の編集長が「日本よ、大人の政治を取り戻せ」というタイトルをつけたんです。そのとき、この「日本よ」という呼びかけができるのが国民雑誌と言われる所以ゆえんなんだなと、ものすごく感動しました。

今、ポリティカル・コレクトネスということが盛んに言われていますけど、行き過ぎると、表現が貧しくなるし、どんどん本音が言いにくい世の中になってくる。そこは作家やジャーナリストの研ぎ澄まされた言葉を駆使して、誤解なきよう伝えていきたい。私が掲げた『文藝春秋』のキャッチフレーズは「日本のど真ん中で本音を叫ぶ雑誌」なんです。

来年、会社は創業から100年になります。同時に月刊『文藝春秋』も創刊100周年を迎える。懐かしいけど、新しい雑誌。そんな雰囲気をたたえた雑誌にしていきたいんですよね。

(聞き手・構成=ノンフィクションライター・中村計)
【関連記事】
【前編】文春砲の生みの親が編集部員に「絶対にやめろ」と厳命していた"たった一つのこと"
「幻の開会式プラン」を報じた週刊文春が五輪組織委の"圧力"に負けずに済んだワケ
「夏の甲子園」朝日新聞の1億円支援のお願いが"ガン無視"されている納得の理由
「五輪中止を訴えていたのに、メダルラッシュに大喜び」なぜマスコミは矛盾した行動を取るのか
「男も女もデリヘルを必要としていた」被災地で性風俗取材を続けたライターの確信