「日本のど真ん中で本音を叫ぶ雑誌です」
——部下の前では、そういう所信表明をしたわけですね。
【新谷】はい、しました。創業者の菊池寛と、2代目の佐佐木茂索の肖像画が掲げてある大会議室で。原点に戻ろう、と。かつて『文藝春秋』は国民雑誌と呼ばれていた。この国の在りようについて、右にも左にも偏らず、自由な心持でスケールの大きなテーマを投げかけてきた。
私が以前、『文藝春秋』のデスクだったとき、当時の編集長が「日本よ、大人の政治を取り戻せ」というタイトルをつけたんです。そのとき、この「日本よ」という呼びかけができるのが国民雑誌と言われる所以なんだなと、ものすごく感動しました。
今、ポリティカル・コレクトネスということが盛んに言われていますけど、行き過ぎると、表現が貧しくなるし、どんどん本音が言いにくい世の中になってくる。そこは作家やジャーナリストの研ぎ澄まされた言葉を駆使して、誤解なきよう伝えていきたい。私が掲げた『文藝春秋』のキャッチフレーズは「日本のど真ん中で本音を叫ぶ雑誌」なんです。
来年、会社は創業から100年になります。同時に月刊『文藝春秋』も創刊100周年を迎える。懐かしいけど、新しい雑誌。そんな雰囲気をたたえた雑誌にしていきたいんですよね。
(聞き手・構成=ノンフィクションライター・中村計)