そして指示がされた。内容は「ほかの社員もPCR検査を受けてください」と「濃厚接触者は14日間自宅待機してください」の主に2つ。会社の代表がその社員の行動を電話で聞いたところ、濃厚接触者はいなかった。
8月1日、その事務所は社員全員を在宅勤務にし、また全員がPCR検査を受けるように指示。すると同日深夜、陽性者がもう1人判明した。
最初の陽性者に濃厚接触者はいなかったものの、8月1日に判明した陽性者は、一緒にランチをした社員がいることがわかった。
その結果、陽性が判明した社員と一緒にランチをしていた人も、濃厚接触者と認定された。ランチは密というほど窮屈ではなく、席間にゆとりはあったそうだが、距離の問題ではなく、同席の時点で濃厚接触者扱いになっている。
それらの社員の感染経路や、感染の原因となるものについては、特定できなかった。夜に出歩くような人たちでもなく、14日前までの行動を確認しても、原因と考えられるようなものは出てきていない。
「ちゃんと気をつけている人でもコロナに感染する。そのことを思い知らされました」と社労士事務所の代表は語る。
責めない、とがめない、情報共有を徹底した効果
なお、その会社は「社員の◯◯さんがコロナに感染しました。濃厚接触者は誰です」と全社員に発表している。その社員が職場で不利益を被ることを考慮して、社員名を発表しない企業もある一方で、その会社は伝える形を取った。それには理由がある。
「わが社は、コロナ感染者が出る前から、『もし社内で感染者が出ても、そのことを一切責めない、とがめない』スタンスを取っていました。『もし社内で1人目の陽性者になっても、あなたは悪くない。だから早めに検査、報告をしてください』と、しつこいぐらいに言っていました。検査の費用はすべて会社負担です」(社労士事務所代表)
そのようなスタンスが徹底されていたので、実名が発表されてもその人が偏見を持たれたりするようなことはなかった。
日々感染者が増えている状況で、すでに検査を受けている社員が多々いたので、「検査をしているのだから、誰かが陽性になるかもしれない」という雰囲気が社内にもあった。
「責めない、は社員がもし陽性だったら大騒ぎになるのを恐れて検査を拒んだり、陽性になってもそのことを隠して出勤したりすることを避けるために言っていたことですが、早期発見に繋がって本当によかったです」(社労士事務所代表)
その結果、発表で社内に動揺が広がるなどの悪影響はなかった。