顧客とも情報を共有、評価する声も

同様に「あの会社はコロナを出したらしい」と風評被害が広がることもなかった。全体的に感染者数が増えている緊急事態宣言下で、いつどこで陽性反応が出てもおかしくない状況にあったことも、会社にとってマイナスに働かなかった部分だろう。

顧客には感染者が出たことも、隠し立てせず話した。

顧客からの反応は「いろんなところで出ていますからね」という感じで、それによる業務への大きなマイナスは生じなかった。むしろ、感染が判明したのはPCR検査を徹底している会社の方針によるものと、評価する声も出ている。

最初の陽性者となった社員は体調不良を訴えていたものの、2人目は無症状で、どちらもその後速やかに回復した。

2人目の陽性反応が出た翌日の8月2日にはオフィスの入居するビル全体、事務所を消毒事業者に依頼し消毒してもらっている。

“明日から在宅勤務”に一斉シフト

2人の陽性者は軽症、無症状だったが、症状がどこかで出るかもしれないので、その社員が仕事をしてよいかどうかの判断は、慎重に行ったという。

基本の考え方は「仕事は割り振らない」で、その後症状が出ず、社員自身に決して無理がなく、働けるようならば働いてもらうスタンスだ。

マスクをして会話する人たち
写真=iStock.com/JGalione
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全社的な働き方も変更した。会社は消毒を行った日にパソコンを各社員の家に送付し、全社員在宅勤務としている。

「接客業などではないので、オフィスで行う業務を在宅に切り替えてもそう問題はありませんでした。今回の感染者発生の前から、顧客との接触をできるだけ減らすべく、やりとりを基本的にWEB対応にしていたので、影響はほとんどありませんでした。業務についても、このようなことが起こることに備えて週に1回は在宅勤務の形をとっていたので、それを完全移行しただけで、オフィスにいないことの不具合はほとんど生じていません。業務オペレーションはもともと仕組み化していたので、遠隔でもたいして変わりませんでした。ただし、それを事前にしておらず、いきなり対応する必要があった場合、スムーズな移行は難しかったかもしれません」(社労士事務所代表)

「平時から準備をしておいてよかった」

その後、濃厚接触者以外の社員は8月9日にPCR検査を受けてもらい、陰性であれば8月10日から出勤可能とし、濃厚接触者は8月16日にPCRを受けて陰性であれば出勤を許可した。