レコメンドウィジェットに表示された広告の多くが薬機法違反

著者が代表を務める株式会社デトリタスは、2018年10月から現在まで、継続的にアドアフィリエイトサイトやレコメンドウィジェット広告のデータを収集している。

図表3に、レコメンドウィジェット運営会社ごとの薬機法違反の疑いがある広告の比率を算出した表を示す。期間は2019年1月から2019年8月までと少し古く、またサンプル数も2647件と多くはないが、大雑把な傾向を捉えるためには役に立つだろう。

筆者作成
【図表3】レコメンドウィジェットごとの薬機法違反の疑いがある広告比率

この表のなかの黄色のバーが、それぞれのレコメンドウィジェット広告全体に占める薬機法違反の疑いがある広告の割合だ。上から、ログリーが31.2%、アウトブレインは12.7%、fluctは36.1%。全体平均は、一番下の「総計」に書いてある26.4%だ。

この数字から、レコメンドウィジェット広告業界は、全体の約4分の1が薬機法違反の疑いがある広告による売り上げで構成されている、と解釈できる。

母数を薬機法規制対象商品に絞った薬機法違反の疑いがある広告の比率も載せる。

筆者作成
【図表4】薬機法規制対象商品に絞った薬機法違反の疑いがある広告の比率

赤いバーは、それぞれのレコメンドウィジェットのうち、薬機法規制対象商品の広告件数を母数にして薬機法違反の疑いがある広告比率を計算したものだ。上から見ていくと、ログリーが69.4%、アウトブレインは42.5%、fluctは87.8%となっている。全体平均は、一番下の「総計」に書いてある77.2%だ。

レコメンドウィジェットに表示された薬機法規制対象商品の広告は、ほとんどが薬機法違反の疑いがある広告で占められている。

“あやしい広告”で儲ける上場企業

前掲の表の一番上に挙げた「ログリー」は、正式には「LOGLY lift」という。ログリー株式会社が運営するレコメンドウィジェット広告だ。

ログリーは、2021年3月期の有価証券報告書によれば、この「LOGLY lift」のみを事業セグメントとする会社だ。レコメンドウィジェット事業のみを行っている会社だということだ。

そして、ログリーは上場企業でもある。証券コードは6579。東証マザーズに上場している。ログリーのプラットフォームで配信された広告のなかで、薬機法違反の疑いがある広告の比率は前掲の表では31.2%だ。

グレーな行為で稼ぐ会社は、どの時代にも存在するだろう。けれども、上場企業が広告事業における売り上げの3割以上を違法の疑いがある広告に頼っていることは無視できない事態ではないだろうか。

ログリーのレコメンドウィジェットを採用しているウェブメディアはたくさんある。例として挙げれば、AFP通信、千葉テレビ、non-no Web、ニコニコニュース、ねとらぼなどだ。

それぞれのメディアで、違法の疑いがある広告の比率はかなり違う。

このなかでは、ニコニコニュースに表示されるログリーのレコメンドウィジェットは、違法の疑いがある広告の比率が高い。筆者が2021年1月から7月まで調べたところ、ニコニコニュースに表示されたログリーの広告枠では、82枠中48枠が薬機法違反の疑いがある広告だった。割合にすれば58.5%だ。