ネットで記事を読んでいると、「医師がおすすめ」といった広告表現を見ることがある。これらは薬機法違反の疑いが強いが、ネット広告の構造上の問題から放置されている。違法広告の実態に詳しいデトリタスの土橋一夫社長は「最大の問題は広告主ではなく、広告枠を管理するレコメンドウィジェットにある」という。今回、プレジデントオンラインでは違法とみられる広告を表示していた2社に質問状を送り、回答を求めた。土橋氏のリポートをお届けする――。(第2回)
約350億円の市場規模を持つ「レコメンドウィジェット広告業界」
前回の記事では、今年5月に報道された第一三共ヘルスケアグループの不適切広告と、7月に報道された大正製薬グループの不適切広告について解説した。また、「アドアフィリエイト」について論じ、インターネット上に違法広告があふれている状況を示した。本稿では、その構造を担っている事業者について、さらに踏み込んで解説する。
「アドアフィリエイト」では、主に法人アフィリエイターが広告枠を買い、自社アフィリエイトサイトへ閲覧者を流入させている。アフィリエイターが買う広告枠は、レコメンドウィジェット広告、FacebookなどのSNS広告、検索結果に表示されるリスティング広告などに分類できる。このうち今回取り上げるのは「レコメンドウィジェット広告」だ。
レコメンドウィジェット広告とは、ニュースサイトやまとめサイトなどの記事下に置かれている、広告のカタマリのことだ。たとえば、画像のようなものだ。
レコメンドウィジェット広告では、広告リンクと記事リンクが混在している。上記キャプチャの赤枠は広告リンク、それ以外はこのウェブメディア内の記事リンクだ。
レコメンドウィジェットでは、ウェブサイト閲覧者の属性を読み取った上で広告が表示される。その特徴から「ユーザー体験を損なわない広告」と表現されることが多い。
レコメンドウィジェット業界の市場規模は、株式会社デジタルインファクトの調査によれば2020年の推測値で349億円だ。
レコメンドウィジェット広告事業は上場企業も手掛ける事業だ。この事業のみで利益を上げている上場企業も存在する。レコメンドウィジェット広告事業は、インターネット広告業界内で一定の存在感を持っている。