企業はメディアを単なる販促ツールにしてはいけない

企業が今、市場の成長のために考えるべきは、新たな価値観、新たな文化を育てることであり、それにコミットして投資すべきなのである。

例えば「メディアを単なる広告媒体、販売促進ツールとして使い倒すのはまずい」と理解しなくてはならない。

メディアのほとんどがコンテンツの販売よりも、広告収入を頼りに経営を支えている。そうである以上、広告主側の強い要望があればメディアは商品カタログ化するしかなくなる。

だがメディアには「カルチャーを支える」という文化的な役割がある。広告する側のメディアへの理解が「販売促進のためのツール」という視点に寄ってしまうと、文化のゆりかごとしてのメディアは機能しなくなる。

新たな市場は広告のみでダイレクトに創り出すことはできない。より広い文化的なトレンドに乗ることで、初めて生まれてくるものである。企業は文化の養育器としてのメディアをサポートし、「メディアとともに新たな文化を育てる」という視点を取り戻さなければならない。

「新たな消費文化を育てる」という命題に向き合う必要がある

メディア自身も、「潜在的な購買者にリーチできます」といった短絡的な売り込みは改め、「消費者の価値理解を広げ、新たな消費文化を育てる」という命題にきちんと向き合う必要がある。

強力な購買導線としてのネットが台頭しているからこそ、既存のマスメディアは新たな価値理解の文化を醸成する機能を強めていかねばならない。新たな価値理解と関心の誕生がなければ、市場はやせ細り、ついには死んでしまう。

文化をつくり、それによって新たな市場を創造していく。企業はそうした観点から自分たちの広報戦略を見直す必要があり、メディアも「文化を育てる」という自分たちの役割をきちんと認識し、広告主に対してもそれを訴求していかねばならない。

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