AirPodsをきっかけに市場が急成長
コロナ禍にあって、私たちのビジネス環境は大きく変化した。もっとも大きな変化は、在宅ワークとZoomに代表されるリモート会議サービスによって、移動や対面コミュニケーションの必要性が低下したことが挙げられる。
一方、コロナによって私たちのビジネス環境に大きな影響を与えているのが「音環境」である。実際、Zoomで感じるストレスの多くは、画面トラブルよりも、音が聞こえなくなったり途切れたりすることではないだろうか。音声市場はまだまだ拡大の余地があり、最新技術でこれらのトラブルが解消されるだけでなく、ビジネスに欠かせないツールに進化していくと思われる。
そこで今回は、ビジネスと音環境、特に後半はイヤホンに関する最近の状況を整理するとともに、読者の音環境の向上に寄与し得る情報を提供したい。
音を利用したサービスとしては、2010年代後半からさまざまな商品が市場に現れた「スマートスピーカー」や、世界的に普及しているものとして「イヤホン(およびヘッドフォン)」が挙げられる。在宅ワークが増える中、特にAppleのAirPodsシリーズをはじめとして、ワイヤレスイヤホン市場が活発化。中でも、2021年の完全ワイヤレスイヤホン世界総販売数は2億9960万台で、前年比24%増と好調。今後も市場が成長すると見られている。(調査会社Counterpoint発表)
すでにワイヤレスイヤホンを利用するユーザーも多いと思われるが、昨今のイヤホン市場は骨伝導タイプなど、さまざまな種類のイヤホンが用途別に市場に登場している。
高音質な音声のほうが相手を説得しやすい
先に述べた音の途切れをはじめ、「音質」は聞き手にもたらす印象に影響を与える。2018年の調査では、学者の講演音声を、高音質で聞きやすいものと、少しエコーがかかって聞きにくい低音質のものに分けて被験者に聞かせたところ、高音質の音のほうが低音質のものより内容が19.3%優れていると評価された。
つまり、高音質と低音質では、同じ内容でも発話者や情報に対する信頼性に差が現れるということである。確かに、音声が途切れることにストレスを感じて気が散ってしまい、内容の理解度をはじめとして、マイナスな印象が生じてしまうことは多々あるだろう。したがって、リモート会議の場面では画質だけでなく、高品質のマイクを用意することで、話し手の説得力を増すことができると考えられる。
次に、音声をどのような環境で聴取するかもまた、説得力や信頼性に影響を与える。