腸の状態で血糖値さえ変わってくる
腸内細菌は、生活習慣病にも大いに関わっています。
腸内や口腔内の環境が乱れて慢性炎症が起きると、防御壁の守りが脆弱になり、体内に入ってはいけない細菌が侵入します。すると、免疫細胞は「敵が来た!」と暴れて炎症を起こしますが、これによって、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが悪くなり、血糖値を悪化させます。
これが、インスリンが効きづらくなる「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態です(*3)。
2型糖尿病のリスクが同じようにある人でも、口腔ケアがしっかりできているか否か、また腸内環境の良し悪しによって、血糖値の状態が変わってきます。
またその逆に、2型糖尿病患者において、乳酸菌類をしっかりと日常的に摂取することで腸内環境が回復すると、防御壁が強化されて、血液中に侵入する細菌の量が減少し、慢性炎症が改善することも分かっています(*4)。
同じものを食べてもスリムな理由
肥満にも、常在細菌の働きが関わっています。「同じものを食べているのに、どうしてあの人ってあんなにスリムなの⁉」と羨ましく思うことってありますよね。逆に、「ほとんど食べていないのに、どうしてこんなにすぐ太るのだろう」という場合も。
また遺伝子検査で、「痩せ型」遺伝子を持っている人が肥満であったり、「肥満」遺伝子を持っている人が痩せていたりすることはよくあります。
この要因の一つが、腸内細菌にあると考えられます。
腸内細菌の種類によって、食べ物からどんなエネルギーを抽出できるかは変わってきます。そのため、同じ食べ物を食べても、人によって、糖などのエネルギー源を多く吸収してしまう人がいるのです。
痩せ菌といわれるのが、酪酸菌やアッカーマンシア菌です。
アッカーマンシア菌は、肥満や2型糖尿病の人に少ないのですが、アッカーマンシア・ムシニフィラをサプリメントで3カ月間投与したところ、プラセボを摂取した人に比べ体重が減少した他、総コレステロール値やインスリン感受性も改善したと報告されています(*5)。ただ、増えすぎても良いわけではありません。適度にバランスよくいることが大切です。
アッカーマンシア菌は、保有する人と保有しない人がいますが、酪酸菌はほとんどの人の腸内に常在していますので、こちらはエサを与えて増やすことは可能です。彼らの大好物は、海藻類やりんごやプルーン、こんにゃく、ゴボウ、納豆などに含まれる水溶性食物繊維です。
これらを食べることで腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が鍵になります。
短鎖脂肪酸は、エネルギー源になる一方で、脂肪細胞に脂肪が取り込まれて肥大化するのを抑え、さらには、脳に直接作用して食欲も抑え、交感神経を刺激して代謝を高めることで、総合的にスリムを維持する方に働きます。