「もはや末期症状」NHKに残した傷跡は大きすぎる
かんぽ不正報道問題で、経営委員会は、あまねく視聴者の代表としてNHKの業務をチェックすべき存在だったのに、日本郵政グループという特別扱いの「視聴者」の代弁者と化してしまった。
放送法の理念を十分に理解できず、視聴者代表の自覚を置き忘れ、かんぽ保険の被害拡大を食い止めようとする番組を封じ込もうとした経営委員会の罪は重い。
情報隠蔽が視聴者の信頼を裏切ることにつながることがわからないほど、無知蒙昧の集団に成り下がってしまったのである。
もはや末期症状を呈していると言わざるを得ない。
もっとも、経営委員会に無理筋を押しつけた張本人は、NHKを監督する総務省の事務次官の経歴をもつ鈴木日本郵政上級副社長だという指摘もある。日本郵政グループの中枢にあって、NHK攻撃にうつつを抜かし、足元で起きたかんぽ不正販売問題では適切な対処ができず被害を拡大させてしまった。その結果は、日本郵政グループ3社長の辞任につながり、さらに、後輩の鈴木茂樹事務次官まで辞任に追い込んだ。そして、いまだに森下委員長をさらし者にしている。
かんぽ不正報道問題は、NHK経営委員会がきちんと機能しているのかが問われた「事件」であり、「公共放送」を維持するための受信料制度の根幹にかかわる問題としてとらえられねばならない。
このため、現在、NHK内部からも検証が進められている。
NHK放送文化研究所の村上圭子研究員が、「文研ブログ」で、8月13日の第一弾を皮切りに、順次、実相を解き明かそうと試みている。
一連のかんぽ不正報道問題が、NHKに残した傷跡はとてつもなく大きい。
上田会長の警告は、まさに現実のものになりつつある。