記憶力が高まる勉強に有効なゲーム
【小山】子どもがゲームにハマったときに、親が楽しさを理解してくれると関係性はよくなると思います。うちではゲームがコミュニケーションのツールになっていました。
それだけでなく、勉強になるゲームもあります。お子さんがゲームばかりして勉強しないと悩んでいる方には、ゲームで勉強させるのもおすすめです。
――具体的にはどんなゲームが勉強になりますか?
【小山】私は英語が苦手だったので、『もえたんDS』というニンテンドーDSのゲームにお世話になりました。その名の通り、かわいいキャラに萌えながら英語と親しむゲームで、かわいい声優さんの声が耳に残りやすかったです。このゲームのおかげで、大学入試で英語が得点源になりました。
あと、『Fate/Grand Order』というゲームは歴史のテストに役立ちました。歴史上の英雄や偉人を使って世界の危機を救うゲームで、自然と歴史上の重要人物のことが理解でき、さらにその人物を通じて、背景にある当時の社会制度や宗教なども学べます。歴史は参考書だと知識単体の丸暗記になりがちですが、ゲームだと歴史上の人物のキャラクターを通じてストーリーで理解するので、記憶の定着が良いと思います。
【中村】僕は記憶力そのものも良くなったと感じます。小さいときから、ゲームのガイドブックを読みまくって、呪文だとか、アイテムの名前を全部覚えていました。そのおかげか、暗記できる量が広がっていて、暗記は得意でした。みんなゲームと学校の勉強は違うと思っているけど、トレーニングになっていたと思います。
【小山】わかる、それ、すごく共感します。
【岡本】僕も小さいときは、ありえないところまで覚えていて。『モンスターハンター』のアイテムが出てくるパーセンテージも全部言えました。
――親は「その記憶力をほかのことに使いなさい」って怒っちゃったりするんですよね。
【中村】そうですね。でも、実感としては、ゲームで得た知識はほかのことにも使えるんです。
勉強もゲームと同じ方法で攻略できる
【高】僕は勉強自体をゲーム感覚でやっていました。
教科書を読むことにはあまり時間をかけず、とりあえず問題を解く。できなかったら、なんでだろうって対策を練ります。そうやって、ひたすら問題集をクリアしていく感じです。
大学受験のときは、忘却曲線に沿って問題を出してくれる学習アプリを使って、勉強していました。学習アプリ「Quizlet(クイズレット)」は使いやすくておすすめです。
【中村】ゲーム感覚って、わかります。
僕はロールプレーイングゲームが好きで、勉強は自分をレベリング(キャラクターのレベルアップさせていくこと)することだと考えて、問題を解いていました。問題を一問解くごとに経験値が上がったなって。
そして、できなくても、あまり落ち込まないです。ゲームだってプレーし始めはボコボコにやられるので、そこは織り込み済み。結果が悪くても、あまり落ち込まないで、ほかのアプローチを考えたり、努力が足りないと考えたりするマインドセットはゲームで養われたといってもいいかもしれません。
【岡本】あと、ゲームの意外な効用としては、覚醒効果があると思います。受験の時は、朝一番にゲームをやると興奮して、目が覚めた。コーヒーより、よっぽど効きますよ。
――ありがとうございます。いろんな意味で、ゲームは勉強に効果的ってことなんですね。驚きました。これからは子どもがゲームしているときの見方を変えていこうと思います。
【藤本徹准教授:談】同じゲーム好きの子でも、小山さんがボーナスシーンを見るのが好きだったり、高さんは自分でクリアするのが好きだったり、どこにおもしろさを感じているかは人それぞれでした。
親御さんには、まず、子どもがゲームのどこにおもしろさを感じているのか知ってほしいと思います。「やるべきことをして、ゲームをする」と、「決まった時間に電源が落ちるようにする」では、効果的なルールに幅がありますが、ゲームを敵対視したままでは、それはわかりません。ゲームを通じたコミュニケーションでわが子がどんなタイプかがわかってくると、親子共に納得感のある有効なルールをつくることもできるでしょう。
東京大学大学院情報学環 藤本徹准教授/慶應義塾大学環境情報学部卒。民間企業等を経てペンシルバニア州立大学大学院教授システム学博士課程修了。博士(Ph.D.)。専門は教授システム学、ゲーム学習論、オンライン教育。著書に『シリアスゲーム』(東京電機大学出版局)、『ゲームと教育・学習』(共編著・ミネルヴァ書房)、訳書に『幸せな未来は「ゲーム」が創る』(早川書房)など。