感染拡大の最中に衆院解散・総選挙を進めるおかしさ

17日の新型コロナ対策本部で人流抑制の新対策を打ち出したと前述したが、

この対策本部で政府は7府県に対する緊急事態宣言の発令と、10県へのまん延防止等重点措置の適用を新たに決定した。期間は8月20日から9月12日までとなる。

この決定にともない、宣言発令中の東京など6都府県と、重点措置適用中の北海道など6道県の期限も8月31日から9月12日に延長される。これで宣言と重点措置の対象は計29都道府県となり、47都道府県の6割に上った。

菅首相は対策本部で「これまでに経験のない感染拡大が続いている。重症者数も急激に増加した。首都圏を中心に医療体制は非常に厳しい状況だ」と語ったというが、その一方で東京パラリンピックや自民党総裁選、衆院解散・総選挙の準備を押し進めている。危機管理意識の欠如したおかしな話である。「感染拡大防止を最優先に」とは到底思えない。

「宣言や重点措置を小出しにする泥縄式の対応」と朝日社説

8月18日付の朝日新聞の社説はこう書き出す。

「感染力の強いデルタ株の広がりを見込んで、専門家は早くから、今日のような新型コロナの感染爆発と医療逼迫に警鐘を鳴らしていた。にもかかわらず、ワクチン接種の加速に期待をかけ、医療提供体制や検査の拡充など、十分な備えを怠ってきた菅政権の責任は極めて重い」

菅首相はこれまでワクチンに頼り過ぎてきた。接種を広げればそれで感染が下火になると考えたのだろう。だが、予防接種というものに対する理解が不足している。インフルエンザのワクチンがそうであるように、ワクチンは重症化を防ぐ手段であり、接種したとしても感染はする。接種直後はまだしも、接種後は時間とともに獲得した免疫力が弱り、効果が薄れてくる。イスラエルなどワクチン接種の進んだ国でも3回目を打つ必要に迫られている現状を見れば、よく分かるはずだ。

朝日社説は「菅首相は7月初め、東京都に4度目の宣言を決めた際、『東京を起点とする感染拡大は絶対に避ける』と述べたが、その約束は果たされなかった。『先手先手で予防的措置を講ずる』という言葉とは裏腹に、新規陽性者の急増を受け、宣言や重点措置を小出しにする泥縄式の対応に終始した。国民への行動抑制の呼びかけに矛盾する東京五輪の強行もあった。これでは、国民に危機感は伝わらない」とも指摘する。

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「宣言や重点措置を小出し」にする菅首相の手法は、「泥縄式」と批判されても仕方がないだろう。もはや、これまでの宣言や重点措置はあまり効果がないと考えるべきだ。