「次の首相を後進に譲ります」と訴えてみてはどうか
朝日社説は指摘する。
「百貨店の地下食品売り場などでクラスターの発生が相次いだことを受け、政府は従来の飲食店での酒類提供停止に加え、1千平方メートル超の大規模商業施設への入場制限の要請を新たな対策に盛り込んだ。しかし、専門家が求める人出の大幅削減につながるかは心もとない」
確かにこの朝日社説の指摘の通りかもしれない。新型コロナのような新興感染症への対策は、その病原体が人類の初めて遭遇するウイルスだけに難しい。しかし、だからと言って対策の手を緩めてはならない。大きな効果が得られない対策でもそれらを結集すれば、効果は上がるはず。大規模商業施設への入場制限の要請もそうした対策のひとつである。
続けて「首相が最近、強調するのが、自宅療養中に酸素の投与が必要になった場合に対応する『酸素ステーション』の設置や抗体カクテル療法への期待だ。これらの措置が、必要とする人に迅速に届くよう手だてを尽くすのは当然である。ただ、同時に、首相に今、求められるのは、政府の総力をあげて、できることは何でもやるという強い覚悟を示して、国民の理解と協力を得ることではないか」とも指摘するが、首相の記者会見をテレビで見ていると、やはり「覚悟」が伝わってこないのだ。
菅首相は「私は次の首相を後進に譲ります。その代わりに感染拡大の防止にご協力ください」と訴えてみたらどうだろうか。内閣支持率は確実に上がるだろうし、菅首相は後世に残る政治家になるはずだ。
繰り返される「今回の宣言が最後となるような覚悟」
8月18日付の産経新聞の社説(主張)は大きな1本社説で訴える。
「全国の新規陽性者が1日2万人を超える日もある。新型コロナワクチンの接種がまだ行き渡らない中で、現役世代、若者を中心に感染が広がっている。日本中で危機感を共有し、あらゆる手立てを講じて抑え込みたい」
「あらゆる手立て」が肝要だ。ただ問題は菅首相の覚悟のなさなのである。
産経社説も「7月12日に東京に発令されてから、緊急宣言はこれで2度目の延長だ。首相は最初の延長と対象地域拡大を決めた7月30日の記者会見で『今回の宣言が最後となるような覚悟で、政府を挙げて全力で対策を講じていく』と語った」と書き、こう指摘する。
「その覚悟が果たされていないのは残念だ。政府、都道府県の対応はなお後手に回っている」
確か、「今回の宣言が最後となるような覚悟」というフレーズは以前の記者会見でも聞いた。今度は言葉だけでなく、菅首相の覚悟をしっかり見せてほしいと思う。