「都職員を大規模投入すべき」という産経社説は無理筋
産経社説はその後半で「首都圏では病床不足が顕著で、助かる命を助けられない事例が発生している。救急隊員が、症状の悪化した患者を搬送したくても入院先が見つからない。酸素の投与が必要なのに装置が足りない事態も生じている。医療従事者から『制御不能』『災害レベル』との声が出ている」と指摘し、次のように訴える。
「東京都は、感染経路や濃厚接触者を調べる保健所の積極的疫学調査を事実上、縮小した。保健所業務の逼迫が理由だが、なぜ都の職員を大規模に投入する準備を整えてこなかったのか。入院、宿泊療養体制の不備と合わせ、小池百合子都知事は猛省すべきである」
「都の職員を大規模に投入する準備すべきだ」との産経社説の主張には無理がある。職にはどうしても限りがある。大勢の職員を回すと、日常の都政の業務に影響する。
それに新型コロナは人から人へと飛沫感染する呼吸器感染症だ。積極的な疫学調査で感染ルートを洗い出し、感染源やクラスター(感染集団)を潰すやり方は感染拡大が進めば進むほど困難になる。風邪やインフルエンザを封じ込められないのと同じだ。
最後に産経社説は「全国のワクチン接種は1日100万回超で推移し、総計1億1千万回を超えた。少なくとも1回接種した人が半数に迫る。死亡リスクの高い高齢者の感染率は下がってきている。デルタ株が蔓延する中でも効果は期待できる。現役世代や若者への接種を急がなければならない」と主張するが、3回目の接種が必要となるなどワクチンの問題点にも触れるべきだろう。