なぜ「誰かが背後で糸を引いている」と考えてしまうのか

様々な陰謀論を引きおこすのは、このエージェント性やパターン性といった、進化政治学や進化心理学といった進化論が明らかにするヒューマンネイチャー(human nature)である。

人間はしばしば、誰かが背後で糸を引いており、事件の真の原因は別のところにあると思ったり、本当はそのような意図を持ってなかったとしても、歴史上の指導者が何か悪意や善意を持っていたかのように思ったりしてしまう。

ジョン・F・ケネディの暗殺は陰謀だったのか、それとも単なる単独犯の犯行だったのか。犯人は、マンホールに隠れており、直前に飛び出して狙撃したという話もある。ただし、リンカーンの暗殺は陰謀であったのであり、全てのパターンを一律に却下することもできない。

写真=iStock.com/jcorman
※写真はイメージです

真珠湾陰謀論については稿をかえて論じるが、ローズベルトの意図と帰結の判断についても歴史学の状況をしっかりとおさえて議論をする必要があろう。つまるところ、陰謀の中にはしばしば真実もあるのだが、エージェント性やパターン性に駆られた情緒的な議論は、しばしば主張が横滑りして事実が歪曲されたものに陥ってしまう。

「ワクチンは殺人兵器」と語るインフルエンサーたち

そして、冒頭で示唆したように、エージェント性やパターン性のため、我々は新型コロナワクチンの客観的リスクの評価に誤り、しばしばワクチン陰謀論におびえることになる。

SNS上は、新型コロナワクチンを接種すると5Gに接続されるという説があたかも事実かのように議論され、新型コロナワクチン普及の背後には秘密結社があり、これが世界支配を目論見ていると疑ってかかるものもいる。

インフルエンサーや政治家のなかには、「ワクチンは殺人兵器」「打つと5年以内に死ぬ」などと主張したり、SNS上でそもそもコロナは架空のもので、真犯人は別のところにあるなどと論じたりもする。