デマを拡散する「ワクチン陰謀論者」

諸外国に比べて遅れていたが、日本の新型コロナウイルスのワクチン接種も少しずつ軌道に乗ってきている。菅義偉首相は「1日100万回接種」を目標に掲げて、自衛隊運営の大規模接種センターや職域接種などの実施もあり、8月9日時点で接種回数は1億回を超えた。

ところが、この新型コロナワクチンをめぐる不穏な動きが世の中では散見される。それがワクチン陰謀論である。

新型コロナウイルスの感染症対策などに抗議し、プラカードを掲げてデモをする人たち
写真=AFP/時事通信フォト
新型コロナウイルスの感染症対策などに抗議し、デモをする人たち=2020年10月31日

ワクチンを打つと5Gに接続できるという程度のデマならばネガティブな影響は少ないかもしれないが、ワクチンが人口削減のため生物兵器だとする陰謀論や、ワクチンがヒトDNAを改変するといったデマまで広まっている。

この新型コロナ騒動全体についていえるように、ウィルスによる健康被害や死亡率、あるいは治療や予防に関するデマが拡散され、多くの人々の恐怖心を煽ったのと同じように、ワクチン陰謀論も今後の感染症対策にネガティブな影響を及ぼしかねない。

それでは、なぜ人々はこうした陰謀論にはまってしまうのだろうか。そのカギを解くカギが、進化論や科学史の研究者マイケル・シャーマーが論じる、パターン性(patternicity)と、その一種のエージェント性(agenticity)である。