人間に備わったバイアスを自覚することが重要
こうした奇妙なワクチン陰謀論は、その原因(すなわちエージェント性やパターン性)を特定せず、社会で起きている表面の現象だけをみていると、どのように対処したらよいのかが分からないかもしれない。
親や教師であれば、子供たちにどう説明したらよいのか分からず当惑していることだろう。みんながパニックに陥っているなら、本当にワクチン陰謀論は正しいのではないか、と錯覚してしまう危険もある。
しかし、その背後にエージェント性やパターン性といったバイアスがあり、我々にはこうしたナンセンスなオカルト的言説に魅了されてしまう本性があるということがわかれば、こうした社会全体がこうした陰謀論に踊らされているからといって、この動向それ自体に必ずしも真理が含まれているわけではないと、自信をもって伝えることができるようになる。
誤った言説に対する最高のアンチテーゼは学術的に正しい科学的な知見であり、この際は、エージェント性やパターン性といったバイアスが重要なのである。
こうしたバイアスは真珠湾陰謀論、トランプ陰謀論、9.11同時多発テロ陰謀論(ブッシュ政権がテロの犯人)など、様々な陰謀論の背後にある究極的な原因であり、つまるところ、新型コロナのワクチン陰謀論はその一種に過ぎない。
多くの人が進化の過程で人間に備わったパターン性やエージェント性といったバイアスを自覚し、ワクチン陰謀論の誘惑を克服して、科学的に妥当な医療行為を選択するようになることを祈ってやまない。