ダイエットは命知らずの突撃行為

①と②は、短期間で目に見える成果をあげようとして、「食事を抜かす」など無理なダイエットをし、その結果ダイエッティングサイクルにはまり込み、再び短期間の無理なダイエットをするという、表裏一体の関係にあります。「ダイエット」の本質は、いわば命知らずの突撃行為であり、穏やかな長期戦である「ライフスタイル変更」とは、似て非なるものなのです。

③食欲のコントロールができなくなることと、④太りやすい体質になることは、ダイエッティングサイクルにはまり込む原因でもあり結果でもあります。そして、この2点こそが、「ダイエットすると太る」というパラドックスの、謎を解く鍵でもあります。

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では、「食欲のコントロールができなくなる」「太りやすい体質になる」とは、どのようなことなのでしょうか? そのメカニズムを、最新の医学データに基づいて見ていくことにしましょう。

意志で食欲をコントロールすることはできない

食欲は、それがなければ生命を維持できない、最も重要な欲求の一つです。それにもかかわらず、「食べたい」という欲求を、私たちは意志で抑え込み、体重を減らそうとします。「人には意志の力があるのだから、できるはずだ」と。実際に、少しの間であれば、意志の力で生理的欲求に打ち勝つことができます。

しかし、睡眠不足が何日も続けば頭が朦朧としてきて、ある瞬間にガクンと眠りに落ちてしまうように、ほんの少ししか食べない状態が何日も続けば、ある瞬間に食べ物を口にしたとたん止まらなくなってしまう、ということが起こります。

この「ダイエットによって脱抑制に陥る」、言い換えれば「食欲をコントロールしようとすることで、かえって食欲をコントロールできなくなる」ことは、トロント大学(カナダ)名誉教授のジャネット・ポリヴィ博士と、同大学名誉教授のC・ピーター・ハーマンが1985年に発表して以来、多くの研究がなされてきました。生理的な空腹・満腹のサインに従わず、意志によって食欲をコントロールしようとすると、体に備わった正常なコントロール機能がうまく働かなくなってしまうこと、そして摂食障害を発症するリスクが高まることがわかってきたのです。

ではいったいなぜ、食欲を意志でコントロールしようとすると、体に備わった正常なコントロール機能がうまく働かなくなるのでしょうか?