食べる量を減らせば、初めのうちはやせていくが…

「非運動性活動熱産生」は、運動以外の身体活動、すなわち家事などの日常生活活動によって消費するエネルギー量です。

「運動による熱産生効果」は、運動によって消費するエネルギー量を指します。

この4種類のエネルギー消費量を足したのが、1日の総エネルギー消費量です。おおよその割合は、基礎代謝が総エネルギー消費量の60パーセントを占め、食事による熱産生効果が10パーセント、運動と非運動性を足した身体活動が30パーセントです。

私たちが太るのは、1日の総エネルギー消費量よりも多いエネルギーを摂取すると、余ったエネルギーが筋肉や脂肪となって貯蔵されるからです。逆に、総エネルギー消費量よりも摂取エネルギーが少ないと、貯蔵した脂肪などを分解してエネルギーにするために、やせます。ダイエットとは、摂取エネルギーを総エネルギー消費量よりも少なくしようとする試みなのです。

単純に考えれば、食べる量を減らせば摂取エネルギーが減り、総エネルギー消費量を下回ってやせるはずです。確かに、食べる量を減らせば、初めのうちはやせていきます。「食べないことでやせた」初期のこの経験が、成功体験として深く心に刻みこまれるために、食べる量を減らすことに強くこだわってしまうのです。

脳が代謝活動を低下させて、太りやすい体質に

ところが、ダイエットを続けるとしだいにやせにくくなり、リバウンドすると以前よりも容易に太るようになります。なぜかというと、体重が減ったのにエネルギーが補給されず、「飢餓状態である」と判断すると、脳が代謝活動を低下させてエネルギー消費量を減らすからです。4種類の代謝すべてで消費エネルギーが低下しますが、なかでも特に大きいのが、総エネルギー消費量の60パーセントを占める基礎代謝です。

基礎代謝が低下すると、「ミネソタ飢餓実験」のような状態になります。この実験では、体温が低下して寒気を覚え、心拍数が減り、血圧も低下し、手足にむくみが出たり、皮膚がボロボロになったりし、さらに理解力や集中力が低下するなど脳の働きにも影響が出ました。健常な状態を保つだけのエネルギーが得られないので、脳は、消費エネルギーを減らして低レベルで生命を維持しようとしたのです。

消費エネルギーが減れば、食べる量が少なくても、ダイエットし始めの頃と同じようにはやせなくなります。