富裕層は会社員を辞めたあとも働き続ける

一方、「仕事は楽しい。でも会社員だと自由にならない」という人は、自分で会社を立ち上げるなどして働き続けます。経済的自立も早期リタイアも手段でしかなく、「自分がやりたいことを仕事にする」ためのリタイアですね。

私の周囲の富裕層はこのタイプが圧倒的多数派で、彼らは仕事が楽しくて仕方がない。そもそも好きなことをやって、顧客から感謝されて、お金までもらえるので当然と言えば当然かもしれませんが。

また、ユーチューバーやアフィリエイターといったネット起業家も、副業が大きくなって会社を辞めたとしても、継続して仕事をしていますよね(本人たちには「仕事」という認識はないかもしれませんが)。

つまり、イヤイヤ働いてきた(あるいはストレスに耐え忍んで働いてきた)人は早期リタイアを選び、充実して働いてきた人は独立起業を選ぶと言えそうです。

これはどちらが正しいかどうかではなく、本人がどういう生き方を志向するかという問題ですし、もちろん人によって考えも異なりますから、いろんな人がいます。

たとえば会社がしんどくて不動産投資を始め、それで成功して会社を辞めたものの、不動産売買ビジネスに進出する人、講演ビジネスやオンラインサロンなどを始める人は少なくありません。

1億円貯めて節約しながら暮らすのは幸せなのか

ただ、早期リタイアを選ぶ人の多くは、その後もカリカリと節約をする生活で日々を送る傾向があります。特に、1億円くらいの貯金を築いて後はそれを切り崩すだけとか、年間の配当収入や家賃収入が手取りで400万円とか500万円とか小ぶりなスケールの人に多い印象です。

仕事から解放され自由になったのはいいのですが、興味関心のほぼすべてが「いかにローコストで生活するか」で占められているという、そういう生き方が幸福なのかどうか、私個人としてはあまり魅力に感じないところです。

実際、一生かけても使い切れないほどの巨額の財産を持つ孫正義氏、柳井正氏、三木谷浩史氏が、なお現役を続けるのは、おそらくそういうことなのでしょう。

50代を超えてなおプレーする、Jリーグ史上最高齢プロサッカー選手の三浦知良氏は「サッカーが好きだ」と公言します。

FIREの信奉者に若者が多いということも、なんとなく納得できます。若者ほど「仕事を通じて成長する」「その成長実感や貢献実感が幸福感につながる」という経験が少ないからです。

しかしその段階で小規模にFIREをすると、節約節約の隠居生活のようになってしまうリスクがあります。

会社を辞めて自由になるというのは「目的」ではなく、自分が本当にやりたいことをして生きるための「手段」だと思えば、いま現在の仕事に対する関わり方もまた違ってくるのではないでしょうか。

余計なお世話かもしれませんが。