一方、立憲民主党の追及で、「東北新社」が外国資本の出資比率を20%以下とする放送法に違反していたことを総務省が見逃していた問題が露見、「東北新社」の衛星放送の免許取り消しという前例のない事態に発展した。

野党各党は、「放送・通信行政がゆがめられた疑惑は重大」として武田良太総務相の不信任案を国会に提出するに至った。

そして総務省は6月4日、接待が政策に与える影響を検証していた第三者委員会に「行政がゆがめられたとの指摘は免れない」と断罪され、前官房審議官(情報流通行政局担当)の奈良俊哉内閣審議官(1986年同)ら9人を減給や戒告の懲戒処分、23人を訓告や厳重注意とする処分を行った。

まさに、総務省は上から下まで接待漬けが常態化し、結果として政策がゆがめられていたわけで、ベタベタの「官民癒着」との批判は免れず、近年では例がないほどの大量処分となった。

一掃された「放送行政の中枢ライン」

「総務省接待事件」の発覚から5カ月。新人事の発令にあたって、武田総務相は「情報流通行政局の放送担当、総合通信基盤局のNTT担当は一新する」と断言した。

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結局、放送行政を長く主導してきた吉田真人前総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長、奈良俊哉前官房審議官の3氏は、辞職した。

「東北新社」による高額接待の主舞台となった衛星・地域放送課は、2代前の課長の玉田康人官房総務課長(1990年同)が、外郭団体の海外通信・放送・郵便事業支援機構の常務理事に、前課長で高額接待のうえプロ野球チケットも受け取っていた井幡晃三放送政策課長(1993年同)は、国立研究開発法人情報通信研究機構の総務部副部長に出向となった。

現職の吉田恭子衛星・地域放送課長(1994年同)も、消費者庁の消費者政策課長へ転出。同課の企画官を務めていて訓告処分を受けた三島由佳情報通信作品振興課長(1995年同)は、政治資金適正化委員会の参事官になった。

また、減給処分を受けた放送政策課長経験者の豊嶋基暢情報通信政策課長(1991年同)は出先機関の北海道総合通信局長に就いた。

本省に残った者は少なく、最初に名前が挙がった湯本博信氏がサイバーセキュリティ・情報審議官に、「東北新社」の外資規制違反問題に絡んで国会で「記憶がない」を連発した鈴木信也電波部長(1989年同)は官房総括審議官(広報、政策企画担当)に異動した。

NTTの高額接待を受けた巻口英司氏は、局長級のサイバーセキュリティ統括官に事実上の降格となった。

「総務省接待事件」に絡んで処分を受けたメンバーは軒並み更迭され、放送行政の中枢ラインは「み~んな、いなくなった」(放送業界誌編集長)のである。