「ぼったくり男爵」が意識するのはアメリカのテレビ局だけ

東京五輪の開幕まであと1カ月余りとなった。いまだ「中止」を訴える声はやまないが、21日には観客数上限を定員の50%以内で最大1万人とする方針が正式に決まった。すでに多くの選手や関係者が日本に上陸しており、このまま開催が強行されそうだ。

開催国である日本はまだ感染が収まっていないのに、ぼったくり男爵ことバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長はそんな状況を歯牙にもかけない様子だ。中止できない大きな理由として、「IOCにとって最大のスポンサーである米テレビ局NBCの意向を無視できない」という話がかねてより語られている。

東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議で会談する橋本聖子会長(左)とトーマス・バッハIOC会長(画面上)=2021年6月21日、都内
写真=時事通信フォト
東京五輪・パラリンピックに向けた5者協議で会談する橋本聖子会長(左)とトーマス・バッハIOC会長(画面上)=2021年6月21日、都内

実際に、今回の東京大会でNBCは、全米向けの放送時間を過去最長の7000時間とすると発表。これを受け、広告収入は12億5000万ドル(約1375億円)と同社にとって史上最高額になる見込みだという。

米国での放映権を独占するNBCとそれに逆らえないIOC。両者には、いったいどんな関係性があるのだろうか。

IOCとNBCの「切っても切れない関係」

五輪中止をめぐる報道から、日本でもNBCの名がすっかり浸透したようだ。そもそもNBC(現社名は、NBCユニバーサル)とはどんな会社か。

米国には歴史的に「3大ネットワーク」と呼ばれるメジャーテレビ局が存在する。その3社とは、NBCのほか、CBS、ABCを指す。日本のキー局を頂点とするネットワークとは体制が異なり、3社は主に番組編成に注力。そこへ流すコンテンツは番組制作会社が作るが、こうした会社は局が傘下に持っていたり、映画会社の一部門だったりすることが多い。

NBCは「3大ネットワーク」の他の2社を出し抜くためのキラーコンテンツとして、五輪中継の放送権を巨額の費用を投じてIOCから入手しているというわけだ。IOCは、NBCからの放送権料を当てにして財源確保を狙っているため、両社は切っても切れない関係にある、といっても過言ではない。ただ、テレビ中継が始まって以降、すべての五輪中継がNBC独占だったわけでもなく、一時は他社が放送権を得たこともある。