敬遠されるのは中国製ワクチンだけではない
1120万人がファイザー製、2150万人がアストラゼネカ製と、18歳以上人口の65%がワクチンの2回接種を済ませたイギリスでも都市封鎖や社会的距離策を段階的に解除したとたん、デルタ株感染の急拡大を招いている。7月19日からはほとんどの法的規制が解除されるため1日の新規感染者数は現在の4万2000人からこの夏には10万人に急増する見通しだ。
英イングランド公衆衛生庁によると、アストラゼネカ製を2回接種すれば死亡を防ぐ有効性は75~99%、入院を防ぐ有効性も80~99%に達している。しかしアストラゼネカ製も中国製ワクチンと同じようにmRNAワクチンを開発したアメリカやEUに徹底的に叩かれ、先進国では敬遠されるようになった。これもワクチン外交というポリティクスがなせるわざなのだ。
「ないよりマシ」な中国製ワクチン
このように、グローバルヘルスの観点から言うと、中国製ワクチンは今のところなくてはならない存在なのだ。米デューク大学グローバルヘルス研究所のアンドレア・テイラー副所長も筆者にこう答えた。
「世界は製造・出荷可能なすべてのワクチンを必要としている。WHOは最低要件として50%の有効性を設けており、シノファーム製もシノバック製もこの要件を満たしている。中国製ワクチンは他のワクチンほど効果がないように見えるが、ないよりはマシである。世界中の多くの国はまだワクチンへのアクセスを確保できていないのが現状だ」